風俗で本番行為や盗撮をしてしまい、風俗嬢から慰謝料や損害賠償の名目で金銭を要求されることがあります。

もちろん、それが風俗嬢の言い掛かりであったり、要求金額があまりにも不当で高額である場合には争うべきでしょう。しかし、自身にも落ち度があり、相手の請求金額が納得できる範囲のものであれば穏便に解決したいと考える人も多いでしょう。

そもそも、結婚している方は妻子に風俗で遊んだこと自体知られたくないことですし、職場に連絡でもされたら社内での立場に傷がつくことでしょう。最悪のケースでは、違法犯罪として警察による逮捕も頭によぎる方もいることでしょう。そういった不安を払拭するために、将来に渡って終局的に争いごとを終わらせる”示談”は有効な手段でもあります。

しかし、示談を交わしたのにさらなる金銭請求をされて困っているという相談が弁護士事務所に数多くあります

これは、示談についての知識が未熟であるのに、早急に今の状況を脱したいがために安易に示談書を交わしてしまうことから生じる問題です。

そこでここでは、風俗トラブルを安心して示談で解決させるために必要な情報を分りやすく丁寧に弁護士が解説していきます。

示談とはなにか

示談とは、簡単に言うと、「裁判外で和解すること」をいいます。

では、和解とはなにかというと、民法695条に規定されていますので見てみましょう。

民法695条
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

このように和解とは、当事者間に存在する法律的な争いを、当事者間がお互いに譲歩しあって、争いをやめましょうという契約です。そして、裁判を通じないで和解することを”示談”といいます。

これを風俗トラブルに当てはめると、お客がお金を支払うことにより風俗嬢は警察への被害届や裁判沙汰にしないことを約束すればそれは示談が成立したことになります。

示談の効果

示談を一度交わすと、その内容を後で変更したり取消したりすることが原則としてできなくなります

例えば、お客が風俗で本番強要をしたことで風俗嬢と300万円の示談金で示談が成立したとします。しかし、後で色々と調べてみたところ、30万円程度の賠償金を支払えば済むとわかったとしても、300万円を減額することはできなくなるということです。

その他、本番行為をしたがそれが風俗嬢の同意に基づくものであったケースで、争いごとを避けたい気持ちから示談を結んだとします。しかし弁護士に相談したところ同意のある本番行為では慰謝料等の賠償金を支払う義務がないことを知ったとしても、原則として示談書に記載した金額を支払わなくてはなりません。

これは、示談というのが、”終局的に争いを解決する”ことを目的としたものであることから簡単に取り消しができないようになっているのです。

例外的に取消しや無効を主張できるケース

先述した通り、示談は原則として取り消すことはできませんが、いくつかの例外的なケースでは、示談を取り消したり、無効(最初から効力が生じていないこと)を主張することができます。その例外的ケースのうち、風俗トラブルにおける示談で多く適用されるものを2つ紹介します。

  • 公序良俗に反する示談
  • 詐欺・強迫による示談
1.公序良俗に反する示談の無効主張

民法90条には「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」と定められています。

「公の秩序又は善良の風俗」を一般的に「公序良俗」と呼びます。契約などの法律行為に反社会性が認められる場合には、双方で合意をして法律行為をした場合でもその法律行為は無効となるのです。

示談書の内容が一般的な常識や倫理から著しく逸脱している場合には、公序良俗違反を理由に示談書の効力を争える可能性があります。例えば、お客の無知や窮状に付け込んで、「通常、盗撮したときの示談金相場は100万円が普通だ」などといって、不当に高額な金額で示談を締結させた場合などです。

2.詐欺・強迫による取り消し

民法96条1項は「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる」と規定しています。もしも示談書に署名をするときに詐欺や強迫行為が行われていたとすれば、民法96条を根拠に示談を取り消すことができます。

例えば、「署名しなければ風俗でトラブルを起こしたことを会社や家族にこのことをばらす」といったような発言が風俗店側にあった場合には強迫を根拠に示談書の効力を争えます。

その他、同意ある本番行為は犯罪にはあたらないのにもかかわらず「あなたの行為は強姦罪に該当しますので警察に被害届を出したら人生が終わりますよ。示談を結んだほうが得策かと思いますが」などと店がお客を騙した場合には詐欺取り消しを主張できる可能性も残されています。

示談書のタイトル

示談書の表題(タイトル)は、「示談書」と書かれていないと有効に成立しないのかといった質問をよく受けます。

これについては、表題が”示談書”ではなく、和解書・合意書・念書・覚書などと書かれていても全く問題ありません。それどころか表題がなくとも、その取り交わした契約の中味が、”当事者が互いに譲歩して争いをやめることを約束した”と認められるものであれば有効に成立します。

逆に言えば、仮に示談書といった表題で書面を作成し、それに署名捺印したとしても、その中味が和解したものと認められないようなものであれば示談が成立しないことになります。そこでこの後に、示談を問題なく成立させるための注意点について解説していきます。

風俗トラブルで示談する際の注意点

1.店ではなく、風俗嬢と示談を交わすこと

よく思い返してみてください。示談とは、「当事者が互いに譲歩しあって争いごとをやめることを約束すること」でしたね。そして、本番にしても盗撮にしても、当事者はお客と風俗嬢であって風俗店は関係のない存在です

つまり、店との間で風俗嬢の損害について示談を交わしたところで、風俗嬢と示談を交わしたわけではないので、後で風俗嬢から慰謝料や損害賠償を請求されても仕方のない状態ということです。

実はこういったお客の不知を利用して、悪質な風俗店が女の子と結託して2重に請求してくるといった相談事例も少なくありません。必ずお客と風俗嬢の署名(本名)捺印及び住所を記載した示談書を交わすようにしてください。

ただし、オーナーや店長などの責任者が風俗嬢から委任状をもらい、代理人としてお客と示談を交わすことは可能です。ですので、オーナーや店長と示談書を交わすときは必ず、風俗嬢からの委任状(代理人選任届)を確認してからにしましょう。

2.互いに譲歩した契約にしなくてはならない

先述の通り、書面には必ずしも示談書と書かれていなくても効力を生じます。内容から判断して示談であると認められれば良いということです。

では、どのような内容であれば示談であると認められるのかといえば、何度もしつこく登場してきますが、「当事者が互いに譲歩して争いごとをやめることを約束する」ことが書かれていれば示談は有効に成立します。

しかし、風俗トラブルの際に書かされる書面が次のような文面である場合があります。

示談書

○○(お客)は、△△(風俗嬢)に対し本番を強要したため、賠償金として金□□円を支払います。

氏名(お客):_________
住所:_____________

これでは、単にお客が風俗嬢に一方的に金銭を支払う約束をしたにすぎません。”お互いが譲歩した”と言えるためには、例えば、「△△(風俗嬢)は、本件について○○を許し、被害届、告訴、告白、民事訴訟、本人及び関係者への連絡を行わないこととする」といった文言が入っていなくてはなりません。つまりこういった文言が入っていない場合は、示談が成立していない、すなわち、後から何らかの理由をつけて追加請求される余地を残しているということになります。

悪質な相手方だと、わざと一方の権利義務だけを記載した自分達に有利な内容の書面を準備し、お客が知らないのをいいことに署名捺印させたうえで金銭を支払わせ、その後にさらにお金を要求してきます。こういったケースでは、争いの当事者ではない風俗店が風俗嬢の後で糸を引いていることがほとんどです。

こういった被害にあわないためにも、双方の権利義務の内容が記載された、”互いに譲歩しあった”と認められる示談書を作成するようにしなくてはなりません。

3.当事者両名の本名・住所を記載しなくてはならない

示談は、互いに譲歩しあう契約である以上、両名の署名(実名)と捺印、そして住所の記載が必要になります。それはなぜでしょうか。

理由としては、示談書を交わした後に、一方がその約束を反故(約束違反)にした場合、法的責任追及のためには相手の本名と住所が必要になるからです。

例えば、お客と風俗嬢との間で交わした示談書に、「今後、互いに一切の連絡、金銭請求はしない」「もし違反した場合は、相手方に対して金200万円を支払うものとする」と記載してあったにもかかわらず、風俗嬢が再度お金の無心で連絡してきたとします。お客としては約束を破られたわけですから違約金を請求したいところですが、相手の本名と住所がわからないと訴訟が起こせません。

しかも、相手(風俗嬢)の署名や住所が書かれていないということは、「私はそんな示談契約を結んだ覚えはない」と主張されたらそれまでです。せっかく支払った示談金も水の泡となります。ですので、示談書を交わすときは、自分の署名捺印と住所の記載だけでなく、必ず風俗嬢にも同じものを記載してもらう必要があるのです。

また、偽名や嘘の住所を記載された場合も、後々トラブルが生じたときに責任追及できなくなってしまいますので、必ずお互いの身分証を見せ合い、書面記載の内容と間違いがないかチェックするようにしてください。

偽名や住所不記載、捺印がないと示談は成立しないのか

現実問題として、風俗トラブルを起こした当事者が、自分の本名や住所を相手に知られるのにはかなりの抵抗があるでしょう

お客については、大抵のケースで店側から身分証を取り上げられて、氏名住所を控えられたりコピーをとられたりするので、否応なしに知られてしまうことが多いのですが、風俗嬢の場合は特に個人情報を知られたくないでしょう。

元々女性は警戒心が強いうえに、彼女達は風俗勤務をしていることを人に知られたくないと強く考えています。お客に性的サービスを行う以上は、当然ながらそのお客に顔と風俗勤務は知られていますが、それにプラスして本名と住所を知られるというのは彼女達には大きな問題です。ストーカー被害や個人情報の流出など様々な不安要素がつきまとうからです。

そのため、示談書を交わす際に、お店で使用している源氏名で署名し、本名も住所も書かず、身分証の提示も拒むケースが大半です。

驚かれるかもしれませんが、実は示談は、偽名でも住所不記載でも捺印がなくとも成立します。法律に示談に署名や住所記載をしなくてはならないという定めがないからです。

しかし、思い返してください。示談とは、今後終局的に争いごとを解決する目的で締結される契約です。そのためにお互いが譲歩して、争いごとをやめましょう、約束を破ったら相手に違約金を支払うことにしましょう、といった取り決めをするのです。にもかかわらず、相手の本名も住所もわからなければ、後々トラブルが再発したときに対処しようがなくなります。

はっきり言ってしまえば示談書を交わしていないのと同じ状態ということです。

筆跡鑑定で解決を図れないか

源氏名・住所不記載・身分証の確認なしでお客と風俗嬢が示談書を交わした後に、示談内容に違反する行為を風俗嬢が行ったとします。そこで、お客は弁護士に依頼し、風俗嬢に対して違約金の請求をしようと考えました。

弁護士から連絡を入れたところ、風俗嬢は、「私はそんな契約交わした覚えはない。証拠をだしてください」と主張してくるでしょう。この場合、お客側としては、源氏名で署名したのが当該風俗嬢であるということを立証しなくてはなりません。そこで筆跡鑑定によってそれを証明することが考えられます。

しかし、風俗嬢が筆跡鑑定に協力しなくてはならない法的な義務はありません。筆跡鑑定に必要な彼女の直筆の書類などを手に入れることはまず不可能ですし、仮にそういった書類を入手できたとしても、その書類が彼女によって書かれたものであることをさらに立証する必要性が生じてきます。つまり筆跡鑑定で解決は図れないのです。

具体的解決策

これまで説明してきたように、示談書に、本名での署名、住所の記載、捺印(これは厳密にはなくても構いません)がなく、身分証の確認がとれないと、示談を交わしていないのと同レベルの事態が発生してしまいます

そこで、これらの問題を解決するために、代理人をたてて示談を交わすという方法があります。

具体的には、お客側の代理人Aと、風俗嬢側の代理人Bが、それぞれ委任者(お客と風俗嬢)から委任状をもらった上で、代理人同士で示談書を交わします。もちろん示談書にはお客と風俗嬢の本名や住所を記載して、身分証の確認もします。これにより不備のない示談が成立します。

そして、代理人AとBとの間で、交わした示談書はお互いに自分達の委任者であるお客と風俗嬢には見せないで自分達で保管しておくという約束を取り交わします。これにより瑕疵のない示談書が作れると同時にお互いの個人情報も知られずに済むことになります。

また、この代理人は、お客や風俗嬢の知人友人であっては情報を洩らしかねない危険性があるので、法的な代理権限の資格がある弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士は守秘義務が課せられているので風俗嬢も安心して個人情報を開示できます。

さらに、風俗トラブル発生時に、お客が既に免許証や健康保険証などを取り上げられて、お客の個人情報が相手に伝わっているようなケースでは、お客だけが弁護士を代理人としてたてればよく、風俗嬢は弁護士と直接示談書を交わせば問題ないでしょう。なぜなら、お客の個人情報が既に風俗嬢に知られている以上、個人情報を知られたくないという状況にあるのは風俗嬢だけだからです。

なお、実際問題として、風俗嬢が弁護士費用を自己負担してまで代理人をたてることに賛同することは考えにくいので、大抵のケースでは、お客側の代理人弁護士と、風俗嬢に委任された店舗責任者(店長やオーナー)との間で秘密保持の約束をしたうえで示談を交わすのが一般的です。

示談書に必ず盛り込むべき条項

書面に不備があったがために再三に渡って金銭請求をされてしまっては、なんのために書面を取り交わしてお金を支払ったのか分からなくなってしまいます。そこで、終局的に解決させるためにも、示談書に必ず入れておきたい条項について見ていきましょう。

秘密保持義務

風俗店に本番行為をしたことが判明した時には、身分証明書のコピーを取られて念書にサインをさせられるといった流れが典型的な流れとなりますが、その後示談金を支払うなどしてこの件が解決した後にも、身分証明書を悪用されるのではないか、職場や家族に今回の事をバラされるのではないかといった不安がつきまとうものです。

そのため、示談書には秘密保持義務の条項を入れ、コピーした身分証明書や個人情報の保存方法、返還方法などについて定めておくことが必要です。

清算条項

清算条項とは、「今後これ以上の金銭の請求をしない」といった内容の条項です。風俗トラブルで多いのが、一度金銭を支払ってしまうとその後いろいろな理由をつけて延々と要求されてしまうケースです。最初は本番行為に対する不法行為の損害賠償に始まり、それが終われば「本番行為を強要されたことが原因で体調を崩している」「あれから仕事に出ることができないでいる」などと理由をつけて金銭を要求される可能性があります。

こういったことを避けるために、示談書には清算条項を記載しておく必要があります。

風俗との示談交渉は弁護士に依頼

風俗トラブルに関する示談交渉は、一般人との示談交渉と違い複雑です。

というのは、風俗店は反社会的勢力と繋がっている場合もあり、単に示談金額の調整だけではなく、依頼者の生活の平穏を乱されないように配慮しながらの交渉となるので、非常に神経を使います。
粗暴な風俗店関係者から依頼者を守りつつ、法に則った妥当な示談金に収めるためには、逆に相手に対してもプレッシャーを与えることができる権限がなくてはなりません。

弁護士は、依頼者に代わって「法律家の名前で」警察に告訴状を出せる唯一の資格です。風俗店からの恐喝や脅迫を阻止しつつ示談交渉ができる唯一の資格保有者が弁護士となるのです。

当弁護士事務所は、総勢10名の弁護士が、「家族や職場に知られることなく迅速にトラブルを解決すること」をモットーに取り組んでいます。

依頼者の平穏な生活を取り戻すため、全力でご依頼者様を守ります。相談する勇気が解決への一歩です。お気軽にご相談下さい。

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