法定相続人は兄弟しかいないけれど、兄弟仲があまり良くないから相続させたくないと思っている。子供にだけは相続させたくない。そんな風に考えて、他の親族や第三者に相続財産を贈与したいと思う人も少なからずいます。

かと思えば、逆に特定の人に財産を多めに渡したい、という人も。そんな時に使える制度のひとつが「遺贈」という制度です。しかし、もらった方にしてみれば、税金の負担が増えてかえって迷惑になることも...今回は、遺贈に関する税金についてご紹介します。

相続と遺贈の違い

遺贈は、財産を譲り渡す人(被相続人)が亡くなった時に特定の人に財産が移るように、被相続人が生きている間に遺言という形で行うものです。

遺贈によって財産をもらう人があらかじめその事実を知っている必要はありませんし、お互いに財産の受け渡しについて合意しておく必要もありません。相続とは少し違って、相続は被相続人がなくなることで自動的に発生するものです。

基本的な相続税の計算方法

ここで、相続税の計算方法について押さえておきましょう。まずは一般的な相続が行われた時の税金の計算方法についてです。

原則

相続税の計算は、大きく分けて以下のように行います。

①相続対象となる財産をすべて集め、遺産総額を計算する

②そこから非課税財産や債務の総額を差し引く

③そこからさらに基礎控除額【3,000万+600万×法定相続人数分】を差し引く

④控除額を差し引いた後の課税遺産額を、法定相続人が法定相続通りに相続したものとして按分する

⑤相続・遺贈財産額の割合に応じて按分する

⑥各人の状況や事情によって特例などを適用し、計算し直す

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

このように書くと複雑に思えますが、仕組みを理解するとさほど難しくはありません。この中で、遺贈を受ける人(受遺者といいます)が登場するのは⑤からです。

参考:相続 税金 の記事

例えば、

  • 相続財産総額が1億円
  • 妻に5,000万円
  • 子供(1人)に3,000万円
  • 第三者に2,000万円を遺贈
  • 債務はなし

という例で考えてみましょう。

①から③に従って計算していくと、④の1人当たりの相続税は385万円。ちなみに、これは実際に

今回、相続人は2人なので、385万×2=770万円が今回の相続で発生する相続税の総額です。

ここで、ようやく遺贈を受けた人が登場します。

⑤相続・遺贈財産額の割合に応じて相続税を按分する

4では、相続税の総額が770万円と出ました。ここでもう一度確認しておきましょう。今回遺言では、以下のように定められていました。

  • 相続財産総額が1億円
  • 妻に5,000万円
  • 子供(1人)に3,000万円
  • 第三者に2,000万円を遺贈
  • 債務はなし

770万円を、それぞれの取得割合で按分します。すると以下のようになります。

  • 妻=5000万÷1億×770=385万円
  • 子供=3,000万÷1億×770=231万円
  • 第三者=2,000万÷1億×770=154万円

ここからさらに、⑥各人の状況や事情によって特例などを適用し、計算し直すという流れになります。

相続税が二割加算される「二割加算」とは

遺贈の相続で問題になるのが、いわゆる「二割加算」と呼ばれるものです。相続や遺贈によって財産を受け取る人が【被相続人の一親等の血族(代襲相続人を含む)、および配偶者以外】の場合は、通常の相続制に加え、さらに2割加算された税金が課税されます。これがいわゆる「二割加算」と呼ばれるものです。

例えば、相続税を節税したいといって、法定相続人を増やして相続税の基礎控除を増やす目的で孫を養子縁組するケースはよくありますが、この場合も注意が必要です。通常なら孫は二親等であるはずですが、養子縁組することによって一親等になるので、この場合は二割加算の対象になるのです。

ただ、その孫とは養子縁組しなければ二割加算にはなりません。代襲相続によって孫に相続が発生する場合は二割加算にはならないので、混乱しないようにしてください。

このほか、3親等である甥や姪、2親等である兄弟に財産を相続や遺贈させたいケースも、二割加算の対象となります。もちろん第三者である友人などに財産を遺贈させる場合も二割加算の対象です。例えば相続税額が100万円だとしたら、二割加算されると120万になるということです。かなり額としては大きいといえます。

先ほどの例を見てみましょう。相続税の総額が770万円、取得財産の割合で按分すると、相続税は以下のようになりました。

  • 妻=5000万÷1億×770=385万円
  • 子供=3,000万÷1億×770=231万円
  • 第三者=2,000万÷1億×770=154万円

財産を遺贈されている第三者は、この154万円が1.2倍になるため、1,848,000円が相続税の金額となります。

現金や換金性の高い財産を遺贈されたときは、そこから清算して相続税を支払えば良いですが、遺贈の財産が不動産など換金性が低いものだと、遺贈を受けた人は相続税を支払うために懐から現金を捻出しなければならなくなります。そうなると、相続で財産が増えたのに預金が減るという事態にもなりかねません。

これは、相続財産が基礎控除以下でおさまる場合はそもそも問題になりませんが、相続財産が相続税の課税対象となるときには、遺贈される側に思わぬ損失が出ることもありますので、注意しておきたいところです。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm

⑥各人の状況や事情によって特例などを適用し、相続税を計算し直す

⑤までで、基本的な相続税についての計算が終わりました。ここからさらに、特別控除などを適用して最終的な相続税を割り出していきます。

特別控除や特例が適用される場合、相続税はさらに安くなっていきます。しかし、制度によっては相続人には適用があっても、遺贈には適用されないというものも。一般的な特別控除や特例について、遺贈についても適用されるのかをみていきましょう。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは、被相続人の自宅や事業の用に供されている宅地を相続、または遺贈で取得した場合に、一定の条件を満たせば相続税が5割から8割減額される制度です。自宅に供されていた場合は330㎡までの不動産が小規模宅地の特例の対象となります。事業用の場合は条件に応じて変わりますが、200㎡か400㎡までの面積が対象となります。

小規模宅地の特例は、被相続人、または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族からの相続、または遺贈が対象です。そのため、親族から遺贈を受けていると小規模宅地の特例が適用され、相続税が大きく減税される可能性も出てくるのです。その逆に、第三者に遺贈する場合は小規模宅地の特例は適用されません。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

死亡保険金、死亡退職金の控除

亡くなった人が生命保険に加入していたり、勤めていた会社から退職金を受け取る予定になっていたりすることがありますが、これらのお金が遺贈された場合には相続税の対象となります。しかし、その全額が相続税の対象となるのではなく、法定相続人1人につき500万円の控除があります。

例えば、死亡保険金が2,000万円、法定相続人が3人だったとするならば、2,000万円のうち1,500万円が控除され、相続税の対象となるのは残りの500万円ということに。ただし、この控除は遺贈には適用がないため、受贈者が何人いたとしても控除額が増えることはありません。

生前贈与加算

生前贈与加算は遺贈にも適用されます。

生前贈与加算とは、相続人や受遺者が、相続が発生する3年前までに亡くなった人から贈与を受けていたときには、その贈与財産を相続財産に加えるという制度です。

例えば、2018年に亡くなった人から、2010年から2018年の8年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けていたとしましょう。贈与の場合は、毎年110万円までは「暦年贈与」といって控除されるため、贈与税がかかりません。

しかし、2018年に贈与者が亡くなったので、3年前まで遡って2015年から2018年の3年間の間に贈与された300万円については、贈与ではなく相続や遺贈になります。これが生前贈与加算という制度です。もしすでに納税した贈与税があった場合は、相続税額からその分がマイナスになります。

ただ、この制度が適用されないケースもあります。主に以下の3つのケースでは相続財産として加算されることはありません。

  • 住居用不動産を取得するための資金を夫婦間で贈与したときの配偶者控除
  • 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けたときの非課税制度
  • 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けたときの非課税制度
  • 直系尊属から結婚資金や子育て資金を受けたときの非課税制度

例えば、親や祖父母などから、家を建てたり購入したりするためのお金を贈与された。子供の教育資金として祖父母からお金をもらった、というような場合には、遺贈に関する税金を考えるとき、生前贈与加算は気にしなくてよいということです。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm

数次相続控除

数次相続控除は、遺贈にも適用されます。数次相続とは、その名のとおり、相次いで相続や遺贈が発生することです。

例えば、父親が亡くなって相続が発生し、まもなく母親も死亡して母親の相続も発生したというような場合です。

どちらの相続人でもある子供にとってみれば、父親の相続で発生した相続税も、母親の相続で発生した相続税も納税しなければならず、かなり負担が大きくなってしまいますよね。こういった相続税の負担を軽減するための制度が相次相続控除です。

最初の相続で相続税が課税され、さらにそこから10年以内に次の相続が発生していること、そしてどちらの相続でも自分が相続人であることがこの控除を受けられる対象となります。

相次相続控除額は、以下の計算式で計算されます。最初の相続で発生した相続税額を年10%ずつ減額するとして、その額を次の相続による相続税額から差し引くことで精算するというものです。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm

障害者の税額控除

相続人が障害を持つ方の場合には相続税が軽減されます。こちらも遺贈にも適用のある制度です。障害者控除は、相続人または受遺者が85歳未満の場合に適用されます。

計算式は、【相続人、受遺者が85歳になるまでの年数1年×10万円(障害等級が1級の場合など、重度の障害を持つ「特別障害者」の場合は20万円)】です。例えば、相続税が100万円で受遺者が30歳の場合は、85歳になるまであと55年あるので、550万円が相続税額となります。

参考:https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4167.htm

未成年者の税額控除

障害者の税額控除と同じく、受遺者や相続人が未成年の場合にも、相続税の一部が控除されます。こちらも遺贈に適用できる制度です。

未成年者控除の計算式は【20歳になるまでの年数1年×10万円】となります。相続人が5歳の場合は、20歳になるまであと15年あるので150万円が相続税から控除され、相続人が19歳の場合はあと1年で20歳なので、10万円が控除されるという考え方です。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4164.htm

特例は申告が必要なので注意しよう

相続税が軽減されたり、免除されたりする特例などについてみていきました。遺贈の相続税を計算していくと、最終的に納税額が0円になることはよくあります。しかし、特例などを適用したことで納税額が0円になったからといって、相続税の申告自体が不要かというとそうではありません。ここは重々注意しておく必要があります。

基本的に、相続税の申告が不要なのは、相続財産が基礎控除内でおさまった場合です。相続財産の課税額を計算したとき、それが基礎控除の額以上あるのなら、たとえ小規模宅地の特例や相次相続控除を適用して相続税額が0円になったとしても、そのことを合わせて税務署に申告しなければ、特例の適用がそもそも認められません。

不動産を遺贈したときにかかる税金

遺贈によって現金や預金ではなく、不動産を遺贈するケースも少なくありません。例えば、被相続人の法定相続人である子供が生きていれば、孫は相続人とはなりませんが、孫に自宅を譲ってあげたいというケースには、遺贈が使われることがあります。

不動産を遺贈した場合は、不動産に関する税金が発生します。押さえておきたいのは以下の2つの税金です。

不動産所得税

不動産を所得した人には、不動産所得税という税金が課税されます。相続による不動産の取得にはこの税金はかかりませんが、遺贈の場合は【固定資産評価額の3%】の不動産所得税が課税されます。

例えば、固定資産税評価額が2億円ある不動産を遺贈した場合、600万円の不動産所得税がかかるということに。

ちなみに、遺贈には特定遺贈と包括遺贈がありますが、不動産所得税の対象となるのは特定遺贈をされたケースです。包括遺贈の結果としてある不動産を所得することになった場合には、不動産所得税は課税されません。

不動産所得税は、建物や土地が一定の条件を満たすことで軽減される措置が設けられています。不動産の遺贈がある場合は、各都道府県の自治体のホームページなどで詳細を確認しておきましょう。

参考:https://www.pref.chiba.lg.jp/zeimu/aramashi/shurui/hudousan-keigen.html

不動産登記に関する登録免許税

遺贈によって不動産の所有権を移転するときには、登録免許税がかかります。これは相続の場合もかかる税金ですが、遺贈は相続による移転登記よりも税率が高いので注意です。相続の場合は固定資産税評価額の0.4%ですが、遺贈となると2%と、5倍に跳ね上がってしまいます。

なお、平成30年の税制改正により、相次相続があった場合の登録免許税に関する免税措置が設けられました。ひとつ前の相続時に不動産の所有権移転登記を済ませていないという人は、税金対策としてこの免税措置もチェックしておきましょう。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

参考:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html

遺贈に関する税金で押さえておきたい「みなし譲渡所得税」とは

みなし譲渡所得税とは、実際には譲渡によって利益を得ていないのに、利益を得たものと「みなし」て所得税を課税するというものです。遺贈によって思わぬみなし譲渡所得税が課税されないよう、その仕組みと対象となるものを認識しておきましょう。

みなし譲渡所得税のしくみ

例えば、100万円で購入した不動産が20年後に時価1,000万円の価値になったとします。100万円で購入した土地を1,000万円で売却すれば、900万円の利益が出ることになります。

しかし遺贈した場合には、贈与者はこの利益を得ることはありません。しかし、実際には値上がり益があったとして、譲渡所得税という税金の対象になってしまうのです。これを「みなし譲渡所得税」と呼びます。実際には土地を遺贈したことで利益を得ていないのに、利益を得たとみなして所得税を課税するからです。

包括遺贈を限定承認した場合は注意

個人であっても、みなし譲渡所得税が問題になるケースがあります。それが、包括遺贈があったときです。

包括遺贈とは「相続財産の半分を遺贈する」などのように、特定の財産を指定せずに行われる遺贈のことです。全てプラスの財産であればいいですが、中には借金などのマイナスの財産もあるもの。

そのため受遺者としては、遺贈を承認することによって借金を抱えるのだけは避けたいもの。そこで、「限定承認」という制度を利用することができます。

限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ制度です。例えば、包括遺贈された財産が1億円の預金と3億円の借金だったとしましょう。このまま包括遺贈を単純承認してしまえば、受遺者は1億円の借金を抱えることになります。

しかし、1億円というプラスの財産の範囲内で限定承認をすることにより、3億円の借金のうち、残り2億円の借金については遺贈を拒否できるのです。

個人が法人に不動産などを譲渡した場合

みなし譲渡所得税は、個人から法人に遺贈が行われたときに問題になりやすい税金です。遺贈した個人に課税されるほか、法人側も対価を払わずに資産を得ているということで、法人にも法人税が課税されます。

法人への遺贈でみなし譲渡所得税が課税されないケース

公益法人、宗教法人、学校法人など、公益目的の事業などを行っている法人に、寄付をしたいと考えている人も少なくありません。相続人がいない場合や、相続人がいても仲が悪いので財産を残したくないという人もいます。また、特定の法人の発展を願って寄付をしたい、遺贈したいという人もいるでしょう。

これらの法人に対して遺贈による寄付を行った場合には、みなし譲渡所得税が非課税となります。

公益法人などへの遺贈を行えば、相続税や贈与税も大きく節税できる一方、一般社団法人などは10万円程度で比較的簡単に設立できます。そのため、これらの法人を設立して、そこに財産を移すことによって不当に節税しようと考える人も出てきてしまいました。

その結果、この制度を悪用されないよう、非課税となるためには一定の条件が課されています。以下の要件を満たさなければ、非課税の対象とはならず、税金がかかります。

寄附により、寄附した人の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄附した人 の親族その他これらの人と特別の関係がある人の相続税や贈与税の負担を不 当に減少させる結果とならないと認められること。

引用:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/h29kouekihoujin_02.pdf

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