相続について調べているときによく目にするのが「遺贈」や「死因贈与」という言葉です。どれも亡くなった人の財産を承継する制度ですが、それぞれの特徴は違います。

今回は、遺贈や死因贈与のそれぞれのメリットやデメリットを、相続と絡めて解説します。また、どんな時にどの制度を使えば良いのかについても解説していますので、これから相続対策をしようと考えている人や、特定の人に財産を渡しておきたいという人はぜひ読んでみてください。

そもそも「遺贈」と「死因贈与」、「相続」とは何か

まずは、遺贈と死因贈与、相続との違いについてご紹介します。

遺贈とは

遺贈とは、遺言で相続人や相続人以外の第三者に財産の全部、または一部を譲り渡すことです。遺贈するときは、作成する遺言書にそのことを記載します。遺贈には、以下の4つの種類があります。

包括遺贈

包括遺贈とは、譲り渡す財産を個別に指定せず、割合などを指定する遺贈のやり方です。例えば、「Aに財産の半分を遺贈する」「財産の1/3を遺贈する」というような書き方をします。

特定遺贈

一方特定遺贈とは、譲り渡す財産を指定して遺贈を行うやり方です。「東京都◯◯区◯◯の家屋をAに遺贈する」「車両番号◯◯◯の車両をBに遺贈する」というように記載します。

負担付き遺贈

負担付き遺贈とは、遺贈する代わりに受贈者(財産を受け取る人)に一定の義務を負わせる遺贈です。例えば、不動産を遺贈する代わりに子供の面倒をみてもらう、死後の財産管理をお願いするような時に使われます。

ただ負担付き遺贈の場合、被相続人が亡くなって遺言書を開封してみて初めて自分に義務が課されていると知ることになります。そうすると、「聞いてなかった」「こんな負担を課されるのなら遺贈されたくない」と、受贈者から遺贈を拒否される可能性もあります。

負担付き遺贈を行う際は、生前によく話し合って合意を取っておくことが無難です。

死因贈与とは

遺贈とよく似ているものに「死因贈与」という制度があります。遺贈と同じく、贈与者が死亡した時点で受贈者に財産が贈与されます。死因贈与は贈与契約の一種なので、「贈与します」「受け取ります」という当事者の合意があって成立します。

死因贈与でも「負担付き死因贈与」といって、受贈者に義務を課すことができる制度があります。負担付き死因贈与は負担付き遺贈と違い、合意があって成立するものです。

ですから、確実に義務を守って欲しい時には負担付き遺贈ではなくて負担付き死因贈与にするか、今回の記事では触れませんが、「死後事務委任契約」という委任契約を結ぶ方が確実性が増します。

相続とは

相続は、遺言がなくても被相続人が死亡することで自動的に発生します。死亡時に被相続人が保有していた財産が包括的に相続財産となり、債務も含めて相続人がそれを承継します。相続人が複数いる場合は、誰がどの財産を相続するのかを「遺産分割協議」によって話し合って決めますが、話がまとまらなくて揉めてしまった場合は、調停や裁判に移行することもあります。

遺贈や死因贈与、相続それぞれの相違点

簡単に遺贈や死因贈与、相続について解説しました。ここではもう少し突っ込んで、具体的にどう行った点が違うのかをご紹介します。

遺贈は一方的意思表示、死因贈与は合意が必要

遺贈は遺言によって財産を移転すると書きました。要するに、遺贈は贈与者の一方的な意思で行うことができ、そこに受贈者の承諾は必要ありません。一方死因贈与は贈与契約という「契約」の一種なので、お互いの合意がなければ成立しません。

例えば、特定の人に財産を譲ることを公表すると面倒なことになるので、できるだけ周りに秘密にしておきたい場合には遺贈が適しています。確実に譲り渡したい人に財産を受け取って欲しい場合や、財産を渡す代わりに何かの義務を果たして欲しいと考えている場合には、死因贈与の方が適しているといえます。

遺贈には年齢制限がある

遺贈は遺言によって行いますが、遺言は15歳以上でなければできません。親の同意があったとしても、14歳以下は遺言することができないのです。

一方死因贈与ですが、法律行為なので、未成年は単独で死因贈与をすることはできません。未成年が死因贈与をするのなら、親権者等の同意や代理人が必要です。

遺贈は撤回しやすいが、死因贈与は撤回しにくい

撤回とは、一度表明した意思表示の効果を取り消すことです。撤回ができるかどうかが問題になるのは、贈与者が生きている間です。

例えば、家をAに譲ろうと思ったけれど、晩年Aとの仲が険悪になったので撤回したいという場合や、やっぱりAではなくBに譲ろうと気持ちが変わるケースもあるでしょう。

遺贈の場合、遺言書を新たに作成し直すことで撤回することができます。また、死因贈与も遺贈の考え方にしたがって撤回することができます。特に、単なる口約束で書面によらない贈与の場合はいつでも撤回することが可能です。

ただ問題なのは、負担付死因贈与の場合です。受贈者が義務の履行を始めてしまった場合は、基本的に撤回ができません。この場合にも無条件に撤回を認めてしまうと、受贈者が不利益を受けるからです。

遺言書に書く「遺贈する」「相続する」の違い

遺言書に相続と合わせて遺贈についても書くとき、「遺贈する」「相続する」という文言を使い分けることになります。いざ遺言書を書くときに混乱しないよう、違いを知っておきましょう。

まず重要なことは、「相続する」という表記は相続人以外には使えないこと。例えば、日頃お世話になっている友人のAさんに遺言書で「財産を相続する」と定めることはできません。知人は相続人にはならないからです。一方、相続人である配偶者や子供については、「遺贈する」も「相続する」も使えます。

後述しますが、相続人に対して、遺贈すると相続するとの使い分け方がわからないときには、不動産を譲り渡したい場合は「相続する」を用いた方がメリットが大きいものです。

財産を受贈者が放棄したいとき

いざ相続が始まってみたら、相続財産のほとんどが負債だった。

遺贈を受けたが負担付きなので受け取りたくない。

このようにいろいろな事情があり、「この財産を受け取るのはかえって困るな」と判断することもあるかもしれません。この時に利用できるのが「放棄」です。

死因贈与以外は放棄することができますが、それぞれの制度によって放棄そのものが可能なのかが異なります。また、放棄はできても期限が短いものも。特徴を見ていきましょう。

遺贈は内容によって放棄できる期限が変わる

遺言書を開いてみたら、自分だけ他の相続人よりも多くの財産を遺贈されていた...これを良しとしない相続人もいます。また、多くの財産を遺贈されているけれど、それが負担付遺贈で、義務が重いと感じるようなときには、遺贈の放棄をしたいと思うのではないでしょうか。

遺贈は一方的な意思表示のため、相手方に受け取る義務は発生していません。そこで、受贈者が遺贈を放棄することができます。

ちなみに、特定遺贈の場合はいつでも放棄できますが、包括遺贈の場合は、相続放棄と同じく遺贈の事実を知ってから3ヶ月以内に放棄しなければなりません。

相続はしたいけど遺贈分だけ放棄できる?

遺贈は放棄することができますが、遺贈を放棄すると相続財産を全て放棄することになるのでしょうか?

遺贈の放棄をしたとしても、相続人としての地位まで放棄したことにはなりません。そのため、遺贈だけを放棄して相続財産を相続することはできます。相続財産を放棄するためには、遺贈の放棄の他に相続放棄の手続きを取る必要があります。

ちなみに、遺贈の放棄を考えていながらも、遺贈の放棄をしないままに土地を売却するなどして相続財産を処分したときは、相続を承認したとみなされるため、遺贈の放棄も相続放棄もどちらもできなくなります。

「遺贈は受けたものの、相続財産を全体的に見ると借金が多いので相続放棄をしたい」という場合には注意が必要です。

不動産を譲り渡すとき、遺贈と死因贈与どちらにすべきか

不動産の所有者が変わったときは、所有権移転登記をしておかなければ他人に所有権を主張できません。遺贈や死因贈与、相続で不動産を譲り受けた時は、所有権移転登記が必要です。

第三者に不動産を譲り渡したいとき

「死後はこの人に不動産を譲りたい」という目印として仮登記を使うことができますが、遺贈では仮登記ができません。そのため、不動産を確実に譲り渡したい人がいる場合は、仮登記ができる死因贈与は役立つでしょう。

ただ、いざ所有権移転登記を行う段階になると死因贈与はやっかいです。不動産を受け取った受贈者だけでは移転登記ができず、相続人全員と共同で所有権移転登記をしなければならないからです。

この点、遺贈は遺言執行者と受贈者だけで登記移転ができ、手間自体はかかりません。結論としては、不動産を第三者に譲り渡したい時にはその第三者だけでなく相続人全員の合意を取り付けた上で遺贈にするという進め方がスムーズです。

相続人に不動産を譲り渡したいとき

土地と建物を譲り渡すとき

相続人に対しては、遺言書で「遺贈する」「相続する」とふたつの文言を使うことができます。遺言書を使って相続人に不動産を譲り渡したいときは、遺贈ではなく、相続するとした方がメリットがあります。

遺贈の場合は、所有権移転登記は遺言執行者と受贈者で行わなければなりません。一方、相続の場合は相続した本人単独で移転登記ができるからです。

建物だけを譲り渡すとき

土地は地主から借りており、その上に建つ建物だけを譲り渡したいケースではどうでしょうか。この場合は借地権(土地を借りられる権利)と建物の所有権を譲り渡すことになります。

相続であれば借地権も自動的に相続されますが、遺贈の場合は賃貸人である土地のオーナーの承諾が必要です。このとき、オーナーによっては、承諾する代わりに承諾料を請求されることもあります。

譲り渡したい人が相続人ならば、遺言書では「相続する」と記載しておくと手続きが楽に済みます。

遺贈、死因贈与、相続に関する税金

やはり気になるのが税金です。

どれも相続税の対象となる

遺贈と死因贈与は、「贈与」という名称はついていますが、贈与税ではなく相続税の対象となります。

登録免許税

所有権移転登記を行う際には不動産取得税がかかりますが、遺贈と死因贈与ではその税率に違いが出てきます。遺贈の場合は相続に準じるとして不動産価格の1000分の4、すなわち0.4%の税率ですが、死因贈与の場合は1000分の20となり、2%課税されます。

不動産所得税

不動産を取得した時には不動産所得税がかかります。相続では不動産所得税は発生しないため、不動産所得税が問題になるのは①相続人以外の第三者を受贈者とした遺贈②死因贈与 の2つです。税率は、不動産の固定資産税評価額の3%または4%となっています。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

それぞれの制度の注意点

遺贈と死因贈与、相続についてみていきました。各制度で特に注意しておきたいことを知っておきましょう。

全て「遺留分」に注意

遺言で「Aに全財産を遺贈する」などと書いたとしても、遺留分が生じるためにトラブルになることがあります。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に生じる権利で、法律で最低限の相続できる割合が決まっています。遺留分の割合は以下のように決められています。

  • 両親や祖父母など、直系尊属だけが相続人の場合は被相続人の財産の1/3
  • それ以外の場合は被相続人の財産の1/2

例えば、相続財産が預金6,000万円、相続人が子供3人だけだったとします。この場合は上に書いた「それ以外の場合は被相続人の財産の1/2」にあたるため、6,000万円の1/2にあたる3,000万円、すなわち1人あたり1,000万円は法律で相続できるとされているのです。

もしも遺言で「5,000万円の預金を第三者に遺贈する」と記載されていても、相続人である子供達はそれぞれ「1,000万円は自分の相続財産である」と主張することができるのです。これを「遺留分減殺請求」といいます。

また、子供3人のうち「Aに全財産を遺贈する」という遺言書を残していた場合も、残り2人はそれぞれ1,000万円ずつの相続があることを主張できます。

遺贈も死因贈与も、遺留分減殺請求を受ける可能性があります。誰か特定の人に財産を集中させたい場合は、事前によく話し合ってトラブルにならないようにしておくか、遺留分を考慮した配分にするなどの対策が必要です。

遺贈の場合は遺言書が無効にならないように

遺贈は遺言によって行うものですが、遺言書には正しい書き方が定められています。書くべきものが書かれていなければ無効になる可能性も...

例えば、遺贈する財産が特定されていない書き方になっていて、誰に何を遺贈したいのか、どれくらいの割合を遺贈したいのかがはっきりしない場合や、署名がない場合、「◯年◯月」とだけで日にちが特定できない場合などは、遺言書を残しても無効になってしまいます。

遺言書が無効になると、遺贈も無効になってしまいます。遺贈するときは遺言書が無効になってしまわないよう、要件や形式をしっかり確認して遺言書を作成しましょう。

死因贈与は書面を作成しておく

遺贈と違い、死因贈与は遺言書に記載しなければならないものではありません。また、契約なので基本的に口約束でも死因贈与は成立します。

しかし、いざ相続の場になって「自分は死因贈与を受けたからこの財産をもらう権利がある」と主張しても、証拠がなければトラブルの元です。後から思わぬトラブルに巻き込まれないよう、死因贈与は契約書を作成しておきましょう。

まとめ

遺贈と相続、死因贈与について、それぞれの違いをご紹介しました。特に遺言書が遺されている場合、遺贈と相続は同じ遺言書の中で書き分けられることから、どんな違いがあるのかわかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

終活の一環としてしっかり準備しておかなければ、いざ自分に万が一のことがあった後にトラブルがおきかねません。必要に応じて専門家に相談しながら進めておきましょう。

法律問題・トラブルで悩んでいる方は弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による無料相談を受け付けております。

弁護士と話したことがないので緊張する…相談だけだと申し訳ない…とお考えの方は心配不要です。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

ご相談のみで問題が解決する方も多くおられますので、日本一気軽に相談できる法律事務所にメールまたはお電話でご連絡ください。