相続には「代襲相続」という制度があります。代襲相続というのは、相続人が何らかの事由で相続ができなかったとき、その下の世代の子供が相続をするという制度です。今回は相続放棄と代襲相続の関係についてご紹介します。

代襲相続とは

代襲相続とは、被相続人が亡くなって相続が開始される時点で、既に相続人が亡くなっていたり、相続欠格や廃除によって相続権を失っている場合、その相続人の子供や孫が代わりに相続することをいいます。

代襲相続が生じる3つの要件

ここで分りやすくするために、祖父A・父B・孫Cとしてもう少し詳しく説明します。

①被相続人の子が相続の開始以前に死亡したとき

Aの子供であるBが、Aより先に死亡し、その後Aが死亡したときに、Bの子供であるC(Aからみたら孫)がBに代襲して相続人になります。

②被相続人の子が民法891条の欠格事由に当たるとき

欠格事由とは、相続人がわざと被相続人や相続について先順位や同順位にある者を殺害したり殺害しようとしたり、詐欺や強迫の手段を用いて被相続人に遺言書を書かせたりするなどの行為があった場合に相続権を失う制度をいいます。

つまり、BがAを殺害したり、騙して自己に有利な遺言書を書かせるなどをした場合は相続欠格となり、Aが死亡したときは、BではなくCが代襲して相続することとなります。

③被相続人の子が廃除されたとき

廃除とは、被相続人が相続人から虐待や重大な侮辱を受けたり、または相続人にその他の著しい非行があった場合に、家庭裁判所に請求してその相続人の地位を剥奪することをいいます。
もしBに対する廃除が認められれば、Aが死亡したときにCが代襲相続することになります。

代襲相続の注意点

①被相続人の直系卑属でない者は代襲者になれない

民法887条2項では代襲相続について規定されていますが、但し書きでは、「直系卑属でない者はこの限りでない」と規定されています。

直系卑属とは、ある人を中心とした場合に、その人よりも後の世代に属する直通する血族をさします。逆に、前の世代に属する血族は直系卑属と呼びます。

例えば、Xさんを中心とした場合、Xの子供、孫、曾孫…は直系卑属となります。Xの両親や祖父母、曾祖父母は直系尊属ですね。

また、代襲者とは、代襲相続によって相続権を得る者を指します。

ではここで、Xさんに養子Yがおり、Yには連れ子のZがいたとします。もし、X死亡の前に養子Yが死亡し、その後にXが死んだ場合、Zは代襲相続することが可能でしょうか?

このケースでは、XとYとの間には養子縁組が成立している以上、XからみてYは直系卑属です。しかし、ZはあくまでもXY間の養子縁組前に生まれた”連れ子”ですのでXからみてZは直系卑属にはなりませんのでZが代襲して相続することはできません。

ただし、ZがXY間の養子縁組”後”に出生したのであれば、Xの直系卑属として代襲相続できます。また、Zが連れ子であったとしても、Xが改めてZとも養子縁組を結べば、ZはXの死亡によって通常の法定相続人の立場で相続することもできます。

②兄弟の子供(甥・姪)も代襲者になれる

民法887条2項では、「被相続人の子が、被相続人の相続開始時に死亡していたとき、廃除されたとき、相続欠格に該当するとき」に直系卑属(被相続人からみて、孫・曾孫・玄孫…)が代襲相続すると規定されています。

そうすると、例えばAさんの兄弟姉妹が相続人となりうる立場だとすると、これまでの例に則して兄弟姉妹がAさんより先に死亡したとしても、兄弟姉妹はAさんの子供ではないので、民法887条2項の「被相続人の子」に該当せず、兄弟姉妹の子供(Aさんから見て甥姪)が代襲して相続することはできないように思えます。

しかし実は、民法889条2項で、兄弟姉妹にも代襲相続の規定(887条2項)を準用すると書かれています。

つまり、被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合には、その子供である甥姪が代襲相続することもあるということです。

なお、被相続人の直系卑属の場合はどこまでも下って代襲相続される(これを再代襲と呼びます)のに対し、兄弟姉妹の子供(甥姪)についてはその代までしか代襲相続が生じませんので注意が必要です。

具体的には、被相続人の孫が代襲者になる予定であったが、その孫も被相続人より先に死亡したとしたら、孫の子供である曾孫が代襲(再代襲)することは可能です。それに対して、甥姪が代襲相続する予定であったが、被相続人より先に甥姪が死亡したら、甥姪の子供は代襲できないということです。

一般的に甥や姪の子供以下と被相続人との縁や関係性は薄く、そのような者達にまで財産を受け継がせるのは被相続人の意思に適っていないであろうという考えが下地にあります。

代襲相続が生まれた背景

元々相続人である人がたまたま被相続人よりも早く亡くなっていたり、欠格事由や廃除があったなど、相続人の個別の事情によって相続権がなくなることがあります。

しかし、もしもそういう事情がなければ、相続人は被相続人の財産を相続し、将来的には、続く相続人たち(被相続人からみて孫や曾孫など)が財産を受け取っていたことでしょう。そういった者たちの期待を保護するという趣旨が代襲相続にはあります。

相続放棄と代襲相続の関係

被相続人の子供や兄弟が、被相続人より先に死亡・廃除・欠格となった場合に、その子供(孫や甥姪)が代襲相続することは説明しました。

では、被相続人の子供や兄弟(相続人)が相続放棄した場合にも代襲相続は生じるのでしょうか。

ここでは相続放棄と代襲相続の関係について解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が、一切の遺産相続を放棄する意思表示のことをいいます。

遺産相続は、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐことになるため、プラスの財産よりも借金などの債務の方が大きいと分った時点で相続放棄が利用されることがほとんどです。

なお、相続放棄は相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内に行わないと莫大な借金を背負い込むこともありますので注意が必要です。

被代襲者が相続放棄をすると代襲相続が生じない

被相続人、相続人(被相続人の子供や兄弟)、相続人の子供がいる場合に、代襲相続を論じるために用いる法律用語として、相続人のことを被代襲者、相続人の子供を代襲者と呼んで区別することがあります。

そして、被代襲者が相続放棄をすると代襲相続は生じません。

代襲相続に関する規定である民法887条2項にも、「相続人が被相続人より先に死亡した、廃除された、相続欠格により相続権を失った場合に、相続人の直系卑属が代襲相続する」と書かれており、相続人が相続放棄をした場合に代襲相続が起きるとはどこにも書かれていません。

なぜなら、相続放棄の規定である民法939条で「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と書かれており、相続人となるはずの人(被代襲者)が相続放棄をすると最初から相続人でなかったことになるので、ありもしない相続権が下位である子供に移ることがないからです。

代襲者が損をするケースは少ない

自分の親が相続放棄をしたために、本来代襲して得られるはずだった財産が得られないとすれば、代襲相続の趣旨である、「直系卑属の遺産相続への期待」を裏切ることになりそうですがケースとしては極めて稀です。

というのは、先に説明したように相続放棄が行われるのはプラス財産よりマイナス財産が多い場合がほとんどです。プラスの財産の方が多いのに相続放棄をする人は稀でしょう。

ですので、相続放棄によって代襲相続が生じなかったとしても代襲者は被相続人の残した債務を相続せずに済んだという結果にとどまることがほとんどですので、損をすることはほぼないでしょう。

代襲相続が生じたことで相続放棄をしなくてはならないケースも

このケースを説明する前に、相続の順位について簡単におさらいします。

法定相続人とその相続順位

・配偶者
配偶者は相続順位という概念がなく、被相続人が亡くなった時必ず相続人となります。

・第一順位 子
・第二順位 直系尊属(両親)
・第三順位 兄弟姉妹

簡単に説明すると、被相続人が死亡すると、その財産は配偶者と順位が高い者で分け合う形になります。

例えば、とある被相続人に妻と子供と両親と兄弟姉妹がいたとします。その場合、被相続人が死亡すると、妻と第一順位である子供が財産を相続し分け合います。

もし子供がいないとすると、妻と第二順位である両親が財産を分け合います。さらに、子供も両親もいないとすると、妻と第三順位の兄弟姉妹で分け合うことになるのです。

もし妻がいない(他界・離婚した)場合は、順位に従って全財産を受け継ぐ相続人が決まることになります。

繰り返される相続放棄で起きる問題

これと似たような現象が相続放棄によっても起こります。

上の例で、妻と第一順位である子供が相続放棄をすると、相続権は第二順位の両親に引き継がれます。さらに両親も相続放棄すると第三順位の兄弟姉妹が受け継ぎます。

このように相続放棄が重なって、第三順位の兄弟姉妹に相続権が回ってきたときに、その兄弟姉妹が既に死亡していたとしたら、ここで兄弟姉妹の子供(被相続人の甥姪)に代襲相続が発生します。

それがプラス財産だったら良いのですが、先述の通り、他の相続人が相続放棄しているということはマイナス財産であると考えていいでしょう。

このマイナス財産を相続しないためには、甥姪は相続放棄の手続きをとらなくてはなりません。もし放置して3ヶ月の期間を過ぎれば、被相続人の借金を引き継ぐことになってしまうからです。

親の相続を放棄したら代襲相続ができなくなるのか

例えば、被相続人である祖父をX、相続人である父をY(Xの子供)、相続人の子供(Yの子供でありXの孫)をZとします。

親であるYが多額の借金を残して他界したため、その子供Zは相続放棄をしました。その後、祖父であるXが死亡した場合、ZはXの財産を代襲相続できるのかが問題となります。

先で説明したように、「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と民法939条に規定されています。

これは、Zは親であるYの相続を放棄した時点で初めから相続人ではなかった、つまりは、Zは祖父であるXが死んだ時点で親Yの相続人ではないのだから、Yの相続権がZに移行しない(つまりは代襲相続が生じない)のではないかという解釈が生じるためです。

しかし、結論を言えば、孫であるZは祖父Xの財産を代襲相続できます。

なぜなら、民法939条の条文では、「”その相続に関しては”、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定されています。つまり、父親Yの相続に関してはたしかにその子供Zは相続人ではなくなったけれども、あくまでも父親の相続に関してのみのことであり、祖父との代襲相続の関係にまでは影響を及ぼさないからです。

借金だらけの親の相続を放棄したがために、祖父母のプラス財産まで引き継げないとなれば、代襲相続の趣旨を蔑ろにすることになりますので妥当な結論と言えるでしょう。

法律問題・トラブルで悩んでいる方は弁護士に無料で相談しましょう

全国対応で24時間、弁護士による無料相談を受け付けております。

当法律事務所では、ご相談=ご依頼とは考えておりません。弁護士に解決方法だけでもまずは聞いてみてはいかがでしょうか。

ご相談のみで問題が解決する方も多くおられますので、親身に誠実に弱者を守ることをモットーとする日本一気軽に相談できる法律事務所ですのでお気軽にご連絡ださい。