借金問題を法律的に解決する方法である債務整理手続きには、4つの方法があります。その中でも個人再生は、ある意味もっとも複雑で特殊な手続きです。

このため、通常では弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼して手続きを行うことが一般的となっています。

個人再生は地方裁判所で行われる手続きですが、弁護士や司法書士などが手続きに関与している場合には、ほとんどの地方裁判所で個人再生委員は選任されず、そのまま手続きが行われる扱いとなっています。

しかし、一部の地方裁判所では一定の場合に、あるいは必ず個人再生委員が選任されることになっています。

今回こちらでは、個人再生委員が選任される場合の個人再生手続きの流れについてご説明いたします。

個人再生委員とは?

個人再生委員とは、個人再生手続きが、スムーズに行われるように手続きなどに関して調査や監督などの職務を行う人のことをいいます。

この個人再生委員は通常、弁護士の中から裁判所によってひとり選任されます。

個人再生委員はどんなときに選任されるのか?

個人再生委員を選任するかどうかを決定するのは、その個人再生手続きを行う地方裁判所です。

個人再生に関する手続きは、各地方裁判所ごとに、それぞれ独自の運用方法をとっています。

そのため、必ず個人再生委員を選任するという運用をしている裁判所もあれば、一定の場合に限って選任するという運用をしている裁判所もあります。

個人再生委員が選任されるパターンとしては、おもにつぎのような場合が挙げられます。

①裁判所が、必ず個人再生委員を選任するとしている場合

たとえば東京地方裁判所では、個人再生の申し立てがあった場合には、かならず個人再生委員を選任する扱いとされています。

これは、弁護士が手続きの代理人となっている場合でも同様です。

このように、個人再生委員を選任するかどうかは、裁判所の運用次第なのです。

②法律の専門家に依頼せず個人再生しようとした場合

うえでも述べましたが、個人再生という債務整理方法は、非常に複雑で特殊な手続きです。

そのため、弁護士や司法書士などに依頼せず債務者本人だけで申し立てた場合には、裁判所によって個人再生委員が選任される場合があります。これは、本人だけでは手続きの進行に不安があるため、個人再生委員に適切な助言・監督をさせようという趣旨からです。

③債務総額が高額な場合

個人再生の申立人が高額な借金を負っている場合や債務や資産状況があまりに複雑な場合には、手続きを慎重に進める必要性が高くなります。そのため、このような場合には、裁判所の判断によって個人再生委員が選任される可能性があります。

この場合の「高額」とはいくらなのかという疑問がありますが、これも裁判所の運用次第です。一般的に言って、住宅ローンなどを除いた債務額が数千万円以上になるような場合、個人再生委員が選任される可能性があると考えていいでしょう。

個人再生委員の職務とは

個人再生委員は、おもにつぎの4つの職務を行うこととされています。

①個人再生申立人の財産や収入に関しての調査

申立人の財産や収入に関する状況などを、本人と面談することによって調査します。

②再生債権額の調査

個人再生では、個人再生申立人の負っている各債権者に対する借金額に関し、申立人と貸金業者などとの間に食い違いが出ることがあります。

このような場合には、個人再生委員が実際の債権額について調査することになります。

③適切な再生計画案作成のためのアドバイス

個人再生の申し立てが、専門家の関与なしに本人だけで行われた場合、適切な再生計画案が作成できない可能性があります。

このような場合に、個人再生委員は適切なアドバイスをすることになります。

④個人再生手続きに関する意見書の提出

個人再生の開始決定と再生計画案の認可決定に際して、個人再生委員は意見書を裁判所に提出します。

裁判所は、この意見書を参考にして、それぞれの決定を行うことになります。

⑤履行テストの実施

東京地裁など一部の地方裁判所では、「履行テスト(『履行可能性テスト』ともいいます)」を実施することがあります。

このテストが行われる場合には、個人再生委員が主体となり、テストを進めることになります。

履行テストとは?

個人再生手続きが裁判所によって認められ、実際に業者への返済が始まったとしても、再生計画案どおりに返済ができなければ意味がありません。この返済がきちんと実行できるかどうかを確認する必要があります。

履行テストとは、この返済を個人再生の申立人がきちんと実行することができるかどうかを、事前に確かめるためのものです。

ただし、この制度はあくまでも一部の地裁で採用されている制度です。履行テストを採用していない地裁もたくさんあります。

履行テストの具体的内容とは?

履行テストが行われる場合、個人再生の申立人は一定の金額を一定の金融機関の口座に、毎月きちんと振込送金することになります。

一般的には、個人再生委員の指定する金融機関の口座に、指定された金額を毎月指定された期日までに振り込むことになります。

履行テストの具体的な流れについて

個人再生に関する運用方法が地方裁判所ごとにそれぞれ異なるように、履行テストの運用もそれぞれの地裁によって異なります。

こちらでは、一般的と思われる流れについて簡単にみることにしましょう。

個人再生委員の指示に従うこと

履行テストを行うこととしている地裁の場合、実際に履行テストを主導するのは個人再生委員です。

個人再生委員は、履行テストの具体的内容となる、毎回の振込額・振込先口座・各回の支払い期日・支払い回数などを指定します。

この指示に従い、個人再生の申立人は毎月振込送金することになるのです。

履行テストの期間は3か月から6か月

履行テストが行われる期間は3か月から6か月というのが一般的です。

この期間、毎月指定された金額を指定された口座に振込入金していくことになります。

イメージ的には、返済金や裁判費用を事前に「積み立てる」という感じですね。そして、テスト終了後には、この積み立てたお金が申立人に戻ってきます。

ただし地裁の運用によっては、全額戻ってくることもありますが、個人再生委員への報酬を差し引いた金額が戻ることになることもあります。

履行テストでの支払額はいくら?

これも、各裁判所の運用次第という要素が大きい問題です。

一般的には、再生計画によって支払うことになる毎月の返済額をベースに決定されることになるでしょう。

一括払いではなく、毎月支払うことが必要!

履行テストは、あくまでも個人再生手続き終了後に本格的に始まる再生計画に基づく返済が、きちんと実行できるかを確認するために実施されるものです。

そのため、たとえ一括で支払えるだけの金銭を持っていたとしても、一括で返済することは認められません。

毎月、確実に返済を行うことが重要視されるのです。

履行テストの重要性

履行テストの期間中は、上記のように個人再生委員によって指定された金額を、指定された期日までに振り込みを行わなければなりません。もし、これを滞納するようなことがあると、その後の個人再生手続き上、重大な結果を招くことになりかねません。

なぜなら、裁判所はテスト期間中の「成績」を基に、個人再生計画案を認可するかどうか判断しているからです。

つまり、履行テストでの返済を一度でも怠ると、個人再生の失敗に直結する恐れがあります。

支払いを怠ることのないよう、細心の注意が必要です。

個人再生委員が選任される場合の3つのデメリット

個人再生委員が選任される場合には、つぎのようなデメリットが発生することになります。

①手続きが複雑になる

個人再生委員が選任された場合、手続き上、個人再生委員との面談などが必要になってきます。

このため、個人再生委員が選任されない場合には不要な手続きが増えるため、そのぶん手続きが複雑になります。

②手続きの期間が長くなる

上記と同様、個人再生委員が関与する手続きが増える分、個人再生手続きが終了するまでの期間が、一般的に言って長くなります。

③費用が多くなる!

個人再生委員が選任される場合には、裁判所に納めなければならない費用が、かなり増えることになります。

この増額される費用は、安くても15万円前後、場合によっては30万円以上になると考えたほうがよいでしょう。この費用は、個人再生委員への報酬となります。

ちなみに、札幌地裁や大阪地裁では個人再生委員への報酬は30万円とされています。

一般的な地方裁判所では個人再生委員は選任されない!

いままで個人再生委員が選任されるケースについてご説明してきましたが、実務で個人再生委員が選任されるのは、一部の地方裁判所など限定されたケースです。

つまり、一般的な個人再生の場合には、個人再生委員は選任されないと考えてよいでしょう。

ただし、これはあくまでも弁護士なり司法書士など法律の専門家が手続きに関与している場合に限られます。

全国の大多数の地方裁判所では、このような法律の専門家が手続きを代理・支援している場合には、個人再生委員を不要としています。

個人再生委員が選任される場合の具体的な流れ

個人再生委員が選任される場合でも、個人再生の具体的な流れは、基本的には小規模個人再生のものと同様です。

小規模個人再生との流れの相違点を挙げると、つぎのようになります。

個人再生申し立て後、個人再生委員が選任される

個人再生の申し立てがなされた場合、裁判所の運用や判断によって個人再生委員が選任されます。

個人再生委員との面談

裁判所によって選任された個人再生委員は、選任後早い段階で個人再生申立人と面談を行うことになります。面談時間は、通常30分前後です。

このとき、個人再生委員は申立人の持っている資産や収入状況、今後計画的に債務の返済が可能な状況にあるかなどについて質問し、調査することになります。

再生手続きの開始決定に関する意見書の提出

個人再生申立人との面談結果を踏まえ、個人再生委員は裁判所に対し、個人再生手続きの開始決定の可否に関し意見書を提出します。

裁判所は、この意見書を重要な判断材料として開始決定の可否を決定することになります。

再生計画案の認可決定に関する意見陳述

再生手続き開始決定の際と同じように、今度は再生計画案の認可の可否について意見書を裁判所に提出します。

この意見書も、裁判所の重要な判断材料として利用されます。

個人再生委員選任の有無については早期の確認が重要!

上記のように、個人再生委員が選任されることになる場合には、費用が格段に増えることになってしまいます。少なくとも15万円前後、多ければ30万円以上の費用が増額されます。

このような高額な費用を支払うためには、ある程度以上前から貯金をしておかなければなりません。

そのためにも、なるべく早い段階で個人再生委員に関する地元の裁判所の運用を調べる必要があります。

地元の専門家に相談するのがベスト!

すでに述べましたように、個人再生の手続きに関する運用は、それぞれの地方裁判所によってさまざまです。

つまり、ご自分が手続きを行うことになる地元の地方裁判所で実際どのような運用になっているかは、調べてみない限りわからないということです。

ご自分の地元の裁判所が、実際にどのような運用をしているか早めに知るためには、地元の法律専門家に相談するのがベストです。

個人再生委員が選任されるかどうかに関しての回答だけでなく、ほかにも有益なアドバイスを期待することもできます。

まとめ

個人再生手続きは、非常に複雑で面倒なものです。このため、通常の場合には法律の専門家に依頼することが必要になります。

そのため、個人再生するためには、時間だけでなく費用もかかることになるのです。

もともと個人再生という手続きは、裁判所だけでなく専門家への費用など、お金のかかる手続きです。さらに個人再生委員が選任された場合には、裁判所に支払わなければならない費用が、ますます増大することになります。

ご自分の住所地を管轄する地方裁判所の運用が、個人再生委員を選任するとしている場合には、残念ながらこれに従うしか方法がありません。その場合には、その高額な費用の出費に備える必要があります。

そのためには、ある程度早い段階から、ご自分が手続きを行うことになる地裁で個人再生委員が選任されるのかどうかなど、基本的な情報を集めておくことが重要です。

そのためにも、弁護士や司法書士など債務整理の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

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