悪意の遺棄とは|離婚原因となる具体的な5つのケースを詳しく解説

「夫が生活費を入れてくれないので困っている」という相談を受けることがあります。
世間では、夫が健康なのに働かなかったり、ギャンブルや浪費などのために家庭に生活費を入れないケースがよくあります。

このような夫の行為は、法律上「悪意の遺棄」となり、立派な離婚原因になります。
夫婦の間に離婚原因(離婚事由)がある場合、仮に夫が離婚を拒否していたとしても裁判することによって離婚が認められる可能性があるのです。

今回は、法律上の離婚原因である「悪意の遺棄」について解説させていただきます。

  • 「悪意の遺棄とは何?」
  • 「どのような行為が悪意の遺棄になるの?」
  • 「悪意の遺棄のために離婚した場合の慰謝料はいくらくらい?」

上記のような疑問にお答えしますので、最後までお読みください。

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1.悪意の遺棄とは?|法定離婚事由の1つ

「悪意の遺棄(あくいのいき)」とは、民法が定める5つの法定離婚事由(離婚原因)の1つです。
生活費を入れなかったり家出をして帰ってこないなど、配偶者に家庭を顧みない行為がある場合、悪意の遺棄に該当します。
また、健康なのに夫が働かないケース、専業主婦なのに妻が家事を全くしないケースなども程度が重ければ悪意の遺棄に該当する可能性があります。

相手が拒否しても離婚が可能

夫婦の間に法定離婚事由が存在する場合には、配偶者が離婚を拒否している場合でも裁判することによって離婚が認められる可能性があります。
上記のように、配偶者に「悪意の遺棄」に該当する行為がある場合、離婚事由に該当することになります。

法定離婚事由の1つである「悪意の遺棄」の「悪意」とは、夫婦関係の断絶を意図または容認する積極的な意思のことを言います。
そして「遺棄」とは、夫婦の相手方を放置することと考えてよいでしょう。

簡単に言うと、夫が生活費を入れなかったり、正当な理由もなく同居を拒否しているような場合、悪意の遺棄となります。

2.夫婦が果たすべき義務|同居・協力・扶助の義務

法律上、夫婦にはつぎのように各種の義務が定められています。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

つまり、夫婦には同居し、互いに協力・扶助(助け合うこと)する義務があるのです。
これを細かく分けると、つぎの3つの義務になります。

  • (1)同居義務
  • (2)協力義務
  • (3)扶養義務

配偶者がこれらの各義務に違反している場合、その配偶者は悪意の遺棄をしていると評価されることになります。
それでは、これら各義務について簡単に確認しておきましょう。

(1)同居義務

同居義務とは、文字どおり夫婦が同居すべき義務です。
つまり、夫婦は法律上同居する義務があるのです。

ただし、実際の生活では各種の理由によって同居できない事情が発生することもよくあることです。
たとえば会社の都合によって単身赴任しなければならないケースでは、夫婦は同居することができません。
それぞれの実家の事情によって、同居できなくなることもあるでしょう。

このような特別な事情がある場合には、夫婦が同居できなくても悪意の遺棄には該当しません。
同居しないことが悪意の遺棄として離婚事由になるのは、あくまでも正当な理由がないにもかかわらず同居を拒否しているケースです。

(2)協力義務

夫婦の協力義務とは、お互いが力を合わせて生活していくべき義務のことを言います。
結婚後の人生は、決して短いものではありません。
いい時ばかりでなく悪い時でも、夫婦は力を合わせて生きていく法律上の義務を負っているのです。

(3)扶養義務

扶養義務とは、夫婦お互いが相手方を経済的に「自分と同程度の生活」ができるように養わなければならないという義務です。
たとえば自分はぜいたくな生活をしているのに、配偶者にはお金を渡さず満足に生活すらできないような状態にしている場合には、扶養義務違反となる可能性があります。

3.悪意の遺棄に該当する5つの具体例

配偶者において、つぎのような行為がある場合には悪意の遺棄に該当する可能性があります。

  • (1)生活費を入れない場合
  • (2)正当な理由なく同居を拒否している場合
  • (3)家に帰ってこない場合
  • (4)相手を家から閉め出す場合
  • (5)愛人と同棲している場合

順次、見てみることにしましょう。

(1)生活費を入れない場合

配偶者が自分の給料などを自分勝手に使っているだけで、生活費を一切入れない場合、悪意の遺棄となります。
世間的に見て、悪意の遺棄とされることのある典型的なパターンと言えます。

夫婦が同居している場合はもちろんですが、別居している場合でも夫婦には相手方のために生活費を渡す義務があります。
このため、夫が単身赴任している場合でも生活費を入れない場合には、悪意の遺棄に該当することになります。

また、病気であれば仕方ありませんが、健康でありながら定職につかず、生活費を稼がない行為も悪意の遺棄となります。

(2)正当な理由なく同居を拒否している場合

配偶者が何ら正当な理由なく同居を拒否したり、実家に戻ったまま戻ってこないような場合、相手方に対する悪意の遺棄に該当することになります。

ただし、夫婦の家に戻ってこない場合でも、実家の親族の事情など正当な理由がある場合には悪意の遺棄とはならないので注意が必要です。

(3)家に帰ってこない場合

ケンカして家を飛び出したという理由があれば話は別ですが、何の理由もなく長期間にわたって家出をしたり、家出を頻繁に繰り返しているような場合、悪意の遺棄となる可能性があります。

(4)相手を家から閉め出す場合

夫婦の住居から相手方を締め出す行為は、当然ですが悪意の遺棄に該当します。

(5)愛人と同棲している場合

結婚の相手方以外の異性と同棲し、夫婦の住居に戻ってこない場合、その配偶者の行為は悪意の遺棄に該当します。

4.裁判で実際に悪意の遺棄と認定された事例

それではここで、実際に悪意の遺棄を原因として離婚裁判が行われ、最終的に離婚が認められた事例をいくつかご紹介しましょう。

  • (1) 夫の暴力が原因で妻が別居したケース
  • (2)身障者の妻を夫が放置したケース
  • (3)妻と子供を見捨てて家を出て戻らなかったケース
  • (4)突然行方不明になったケース

(1)夫の暴力が原因で妻が別居したケース

夫の暴力を原因として、妻が子供とともに実家に戻り別居したことから離婚訴訟となった事例です。
悪意の遺棄による離婚を主張する妻に対しては夫からも離婚の請求が行われましたが、裁判所は夫の側に悪意の遺棄を認め、妻の主張する離婚が認定されました(浦和地裁昭和59年9月19日)。

(2)身障者の妻を夫が放置したケース

脳血栓が原因で半身不随になってしまった妻に対して夫が十分な看護をせず、突然離婚を切り出して家を出ていってしまったケースです。
その後、夫は長期間にわたり別居を続け、生活費をまったく送らなかったため裁判となりました。
裁判所は、夫の行為を悪意の遺棄に該当すると判断しました。(浦和地方裁判所昭和59年9月19日判決)

(3)妻と子供を見捨てて家を出て戻らなかったケース

妻と生まれて間もない子供を放置し家を出たままの夫に対して、妻が夫の不貞行為と悪意の遺棄を理由として慰謝料を請求したケースでは、悪意の遺棄が認定され300万円の慰謝料の支払いが夫に命じられました(東京地裁平成21年4月27日)。

(4)突然行方不明になったケース

夫が突然家を飛び出し行方不明となり、生活費も入れなくなってしまった事例が争われたケースにおいて裁判所は、正当な理由なく妻との同居義務及び協力扶助義務を尽くさないことが明らかであるとして悪意の遺棄が認定されました(名古屋地判昭和49年10月1日判決)。

悪意の遺棄に該当しなくても離婚できることがある

すでにご紹介したように悪意の遺棄として離婚が認められるためには、配偶者において積極的に婚姻関係を破たんさせる意思、もしくはそうなっても仕方がないと容認する意思のもとに夫婦間に課せられる同居・協力・扶助の義務に違反する行為をしている必要があります。
つまり、配偶者に対して悪意の遺棄が認められるためには、ある程度厳格な要件が必要です。

しかし、悪意の遺棄までは認められない事例であっても夫婦間の同居・協力・扶助の義務に違反する行為が認められる場合には、法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当して離婚が認められる可能性があります。

5.悪期の遺棄を原因として離婚・慰謝料請求する方法

配偶者の行為が悪意の遺棄に該当する場合、離婚裁判を起こすことで離婚できる可能性があります。
もし配偶者との離婚を考えている場合には、まず当事者で話し合うことをおすすめします。

日本における離婚は80%以上が、当事者の話し合いによる協議離婚です。
協議離婚は、離婚するかどうかや財産分与・慰謝料・養育費の支払いなど離婚に関する各種の条件を当事者の話し合いで決めることができます。

しかし、話がまとまらない場合または話し合い自体ができない場合には、離婚調停や離婚裁判をすることになります。
離婚調停や離婚裁判を自分に有利に進めるためには、悪意の遺棄を裏付ける各種の証拠を集めておくことが大切です。

裁判を有利に進めるための証拠とは?

裁判において悪意の遺棄が認定された場合、離婚が認められるだけでなく、配偶者に対して慰謝料の請求も認められる可能性があります。
裁判で配偶者との離婚を認めてもらい、より多くの慰謝料をもらうためには、裁判を有利に進める必要があります。

裁判を有利に進めるためには、つぎのような各種の証拠を集めておくことをおすすめします。

  • (1)別居の証拠
  • (2)別居に正当な理由がないことの証拠
  • (3)生活費を入れないことの証拠
  • (4)協力・扶助義務違反を証する資料
  • (5)その他必要な資料

それぞれについて、順を追って確認していきましょう。

(1)別居の証拠

配偶者が、法律上の同居義務を果たしていないことを証明するために、つぎのような資料を集めておきましょう

  • ①住民票(または戸籍の附票)
  • ②賃貸借契約書

など

(2)別居に正当な理由がないことの証拠

正当な理由なく同居していないことを証明するためには、主としてつぎのような資料が必要です。

  • ①一方的に別居することを告知するメールやラインなど
  • ②別居に正当な理由がないことを裏付ける当事者の会話の録音データ

など

(3)生活費を入れないことの証拠

配偶者が生活費を入れないことは、悪意の遺棄が認められるための決定的な証拠となり得ます。
つぎのような証拠をそろえるようにしましょう。

  • ①自分でつけた家計簿
  • ②生活費の入金記録のない銀行通帳のコピー

など

(4)協力・扶助義務違反を証する資料

夫婦の協力義務、扶助義務違反がある場合、悪意の遺棄が認められる可能性が高くなります。
つぎのような資料を集めることを心がけてください。

  • ①相手の生活態度を記録した画像・動画など
  • ②日々の相手の態度を記した日記、メモ

など

(5)その他必要な資料

当事者の事情によっては、上記以外にも裁判上証拠となる資料が存在する可能性があります。
必要に応じて必要資料を集めるようにしましょう。
どのような資料が証拠となるかについては、弁護士に相談してください。
効果的な資料の収集方法のコツなどもアドバイスしてもらえるかもしれません。

証拠は多いほど自分に有利になる

悪意の遺棄を理由として離婚や慰謝料を求める場合、裁判所で大きく物を言うのは何といっても証拠です。
有力な証拠が多ければ多いほど裁判は有利に進めることができ、結果として離婚や、より高額の慰謝料が認められることになります。

配偶者から少しでも多く慰謝料を貰いたい場合には、なるべく早い段階から証拠集めをすることが大切です。

6.悪意の遺棄による慰謝料の相場とは?

配偶者において悪意の遺棄が認められる場合の慰謝料は、数十万円から100万円くらいまでが一般的な相場です。
しかし、配偶者の行為が悪質である場合には、数百万円以上の慰謝料が認められる可能性もあります。
実際、先ほどご紹介した事例(妻と生まれたばかりの子供を残して家出をしたケース)では、慰謝料として300万円もの支払いが命じられています。

7.離婚までの生活費を支払ってもらう|婚姻費用分担請求

夫婦には民法上、婚姻費用(日常の生活費など)を分担して支払う義務が課せられています。
このため夫婦が悪意の遺棄を原因として離婚する場合でも、離婚が成立するまでに発生する婚姻費用に関しては、配偶者に対して請求することが可能です。

婚姻費用の計算方法

婚姻費用がいくらになるかに関しては、それぞれの夫婦ごとに異なります。
各家庭における婚姻費用の額は、夫婦の職業や年収、子供の年齢や人数などによって変わってくるのです。

具体的には、以下のリンクから参照できる「養育費・婚姻費用の算定表」を利用することで計算することができます。
算定表を基に、ご自分で計算してみてはいかがでしょうか?

参考:「養育費・婚姻費用の算定表」(裁判所)

相手が婚姻費用を支払わない場合の対処法|調停の申立て

相手が婚姻費用の支払いに応じない場合には、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申立てることができます。
家庭裁判所で行われる調停では、調停委員などの仲介のもとに婚姻費用の支払いについて、夫婦で話し合いを行うことになります。

調停の詳細に関しては、下記サイトを参照してください。

参考:「婚姻費用の分担請求調停」(家庭裁判所)

8.まとめ

今回は、法定離婚事由の1つである「悪意の遺棄」に該当する行為などについて解説させていただきました。

配偶者に悪意の遺棄に該当する行為がある場合、相手が離婚を拒否していたとしても、裁判することによって離婚が認められる可能性があります。
日本では、離婚の圧倒的多数が当事者の話し合いによって成立しています(協議離婚)。
しかし相手が離婚に同意してくれない場合、最終的には離婚を求めて裁判を起こすしか方法がありません。

もし、もはや配偶者に対して愛情を持つことができなくなってしまっているのなら、前向きに離婚を検討する必要があります。
また、配偶者に悪意の遺棄が認められる場合には、離婚と同時に慰謝料の請求をすることも可能です。
もし離婚問題でお悩みであれば、なるべく早く弁護士に相談し、今後の対策などのアドバイスを受けるべきです。

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