法律事務所には日々、次のような相談が寄せられています。

「トラブルの相手方から害意をほのめかす言葉を言われているが、脅迫罪になる言葉なのか判断がつきません

たしかに、「殺すぞ」「殴るぞ」「家に火をつけるぞ」という言葉であれば、それが脅迫罪に該当することは想像がつきやすいでしょう。しかし、そういった明確な台詞ではない場合、果たして脅迫罪になる言葉なのかどうか迷うのは当然です。

そこでここでは、どこからが脅迫罪になる言葉なのか、実際に起きた事件も交えて、脅迫や恐喝事案に詳しい弁護士がわかりやすく丁寧に解説していきます。

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脅迫罪とは

脅迫罪とは、相手が畏怖(怖がること)するような言動(恫喝)をすれば成立する犯罪です。刑法222条に書かれていますので条文を見てみましょう。

脅迫罪(刑法222条)
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

相手が怖がらなくても成立する

重要なポイントとして、脅迫罪は、被害者が怖がらなくても成立することです。

脅迫罪が成立するには「害悪の告知」が必要とされています。そしてこの害悪の告知は、被害者が怖がったかどうかではなく、世間一般的にみて恐怖を抱くだろうと客観的に認められることが必要とされています。

例えば、成人男性が小学生の子供に対して、「ぶん殴る」と言えば、一般的客観的にみて小学生の子供は恐怖を抱くと考えられるため、脅迫罪は成立します

それとは逆に、小学生の子供が成人男性に対し同じく「ぶん殴る」と言ったとしましょう。一般的客観的にみて成人男性が小学生のこの言葉で恐怖を抱くとは考えにくいでしょう。そのため、仮にこの男性が恐怖を覚えたとしても、脅迫罪は成立しないことになります。

なお、被害者が怖がらなくても成立しますので、脅迫罪に未遂罪はありません

なにに対して害悪の告知をすれば成立する?

害悪の告知とは、読んで字のごとく、害を与えるような悪いことをすると相手に告げることを意味します。では具体的に「なにに対して」危害を加えるような言動があれば、脅迫罪が成立するのでしょうか。次のようなケースでは脅迫罪に該当する可能性があるでしょう。

生命に対して

「お前を殺してやる」「家族全員あの世に送ってやる」「子供を火あぶりにして殺害するぞ」「海に沈めて水死させてやる」など

身体に対して

「指をへし折ってやる」「殴り倒してやる」「痛い目にあわせてやる」「お前の奥さんの爪を剥いでやる」「片端にするぞ」など

自由に対して

「部屋に鍵をかけて出られなくしてやる」「子供を誘拐して監禁してやる」「ここから帰れると思うなよ」など

名誉に対して

「性行為の画像をネットに拡散してやる」「マスコミに全部ばらしてやる」「不倫していることを職場の連中に話してやる」など

財産に対して

「車のタイヤをパンクさせてやる」「飼い猫を殺してやる」「家に灯油撒いて火をつけてやる」など

誰を脅迫すれば成立する?

本人まはたその親族を脅せば成立します。

そのため、「お前の彼女を刺し殺してやる」「友達が恥をかく秘密を世間に公表してやる」といった、恋人や友人を害する言葉は脅迫罪になりません

なぜなら、恋人や友人の定義は曖昧だからです。恋人、友達以上恋人未満、親友、友達といった風に、明確な線引きができるものでもありません。つまり、脅迫罪の対象となる人が曖昧だと犯罪の成否を判断することが難しくなることから対象となる人を明白にしているのです。

また、対象となるのは、自然人である”人”であって、”法人”は対象外です。

ただし、法人に対する脅迫言動が、その告知を受けた法人の代表者や代理人等の生命・身体・自由・名誉・財産に危害を加えるものであると判断できる場合には、その個人に対する脅迫罪は成立するとされています。「会社を爆破するぞ」「誹謗中傷のデマ情報をネットに流して会社を倒産させてやる」といった台詞などがその例です。

脅迫の手段は?

直接的に顔を合わせて害悪を告知するほかに、電話・メール・LINE・SNS(メッセージ機能)・FAXの場合も脅迫罪になり得ます

また、ブログや掲示板、SNSで「○○を処刑する」といった内容の書き込みをするケースも脅迫罪が成立する可能性があります。直接的ではないにせよ、本人が目にしたり、第三者経由でその書き込み内容が伝わることも十分に考えられるからです。

さらに、言葉でなくとも態度で示す場合も脅迫罪になることもあります。例えば、無言でナイフを突きつける、殴る素振りを見せる等の行為がそれに該当します。

どんな刑罰が課されるの?

「2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑」となります。ただし、前科がなかったり(初犯)、悪質性が低い場合には起訴されるケースは少なく罰金刑となることが多いでしょう

また、もし起訴されたとしても、略式裁判になる可能性が高いでしょう。略式裁判とは、被告人が裁判に出廷せずに、検察官の提出した書面のみで審理が行われる簡略化された裁判です。この裁判では、懲役・禁固刑や100万円を超える罰金を課すことができません。懲役刑とは、有罪判決を受けた者を監獄(刑務所)に拘置して刑務作業を行わせる刑罰です。

ただし、前科があったり悪質性が高いと判断されれば通常の刑事裁判にかけられ、懲役刑が課されることもあります。被害者との示談が成立すれば執行猶予がつきやすくなるでしょう。

親告罪?非親告罪?

親告罪とは、被害者側が刑事告訴をしなければ検察が起訴をすることができない犯罪のことです。刑事告訴とは、被害届のように犯罪被害の申告をするだけでなく、加害者を処罰する意思を含む申し出です。

脅迫罪は「非親告罪」ですので、被害者が刑事告訴しなくても警察に逮捕され、検察に起訴されて被告人となる可能性もあります。被害者の加害者に対する処罰感情がなくても刑事裁判になる可能性があるということです。

時効は?

脅迫罪の時効は、刑事事件の時効と民事事件の時効の2種類があります。

刑事事件の時効

刑事事件の時効は公訴時効のことをいいます。公訴時効とは、犯罪が終了してから一定期間が経過すると検察官が起訴(公訴の提起)できなくなることです。

公訴時効は、犯罪の重大さによってその期間が変わりますが、脅迫罪の時効は3年とされています。

なお、親告罪には、犯人を知った日から6ヶ月を過ぎれば告訴ができない告訴期間というものががありますが、脅迫罪は親告罪ではない(非親告罪)ので、犯罪が終了してから3年以内(公訴時効)であれば被害者は刑事告訴ができます。公訴時効と告訴期間を混同して間違える人が多いため注意が必要です

民事事件の時効

民事事件の時効とは、加害者に損害賠償請求が可能な期間のことです。

損害賠償請求には、金銭的な損害のほか、精神的損害も含まれています。精神的損害のことを慰謝料といいます。脅迫被害は、”害悪の告知”をされることですので、精神的な傷に対する賠償、つまりは慰謝料請求することがほとんどでしょう。

この損害賠償請求権は、損害および加害者が誰かを知ったときから時効が進行し3年で時効をむかえます。また、不法行為の時から20年経ったときも時効となります(これを除斥期間といいます)。

例えば、ある人が、身元不明の人物から脅迫電話の被害を受けたとします。その人物が誰かわからないまま5年の歳月が過ぎてやっと身元が判明した場合、その判明した時点から民事の時効が開始されるのです。ただし、脅迫被害を受けてから20年以上経過してから犯人が判明しても、除斥期間により既に時効が完了しているため損害賠償請求はできません。

脅迫罪と関連する犯罪

人を脅迫して犯行に及ぶ犯罪としては、脅迫罪のほかに、強要罪・恐喝罪・強盗罪・強制性交等罪など数多くあります。

ここでは、脅迫罪と関連性の強い、強要罪と恐喝罪をピックアップし脅迫罪との違いについて紹介します

強要罪との違い

義務のないことを行わせたか否か

強要罪(刑法223条)は、相手(または親族)の生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対する害悪の告知をして、義務のないことを行わせる犯罪です。

刑法の第32章(脅迫の罪)には、222条の脅迫罪、223条の強要罪が規定されており、この2つは類似犯罪として扱われていることがわかります。

脅迫罪との違いは、単に脅すだけでなく、義務のないことを相手に行わせたかどうかという点です

具体的には、「土下座しなかったら今後店が営業できないようにしてやる」と言って土下座させたり、「不倫をばらされたくなければ職場を辞めろ」と言って退職に追い込んだりすれば、強要罪が成立する可能性があります。

未遂罪の有無

脅迫罪に未遂罪はありませんが強要罪には未遂規定(刑法223条3項)があります

つまり、脅迫して人に義務のないことを行わせようとしたが相手がそれを行わなかった場合には、強要未遂罪となるのです

例えば、「今すぐ彼女と別れろ。さもないと蹴り飛ばすぞ」と脅したが、相手が彼女と別れなかった場合には強要未遂に該当します。

暴力団員が工事業者を脅迫して、自分の指定した業者を公共工事の下請けに参入させようとしたが失敗に終わった事件につき、強要未遂罪で有罪判決が下っています(神戸地方裁判所平成16年6月8日)。

刑罰の重さ

脅迫罪の法定刑が、懲役2年以下または30万円以下の罰金であるのに対し、強要罪は、3年以下の懲役刑です。

脅迫罪と違い強要罪では罰金刑がなくなり、刑期も1年延びております。これは、脅して相手を怖がらせただけでなく、義務のないことを無理やりやらせたことでより悪質の度合いが大きいからです。

恐喝罪との違い

財物を交付させたか否か

恐喝罪(刑法249条)とは、人を恐喝(暴力を振るったり脅迫すること)して財物を交付させたり、財産上の不法な利益を得る犯罪です。いわゆる”カツアゲ””タカリ”をイメージすればしっくりくるでしょう。

財産を交付させたり財産上の利益を得たかどうかという点が、脅迫罪と最も大きく違う点です。そのほか、恐喝罪では、暴力を手段とした場合にも成立する点で異なります。

財物とは、金銭や財産的価値のある物のことですが、具体的には、「土地の名義を俺のものに変更しろ。さもなくばヤクザに襲わせるぞ」「子供に五体満足で育って欲しいと思うなら金を振り込め」「風俗で働いていたことを婚約者に知られたくないなら金目のものをよこせ」と言って財物を交付させれば恐喝罪が成立します。

また、飲食店で店員が怖がるレベルのクレームを入れて飲食代を踏み倒したり、借金の貸主を脅して返済を免除または一時的に断念させるなど、モノではない財産上の利益を不法に得た場合も成立します

たとえば、賭け事で勝った被告人が「海に行って、足腰立たんようにしてやる」等の脅し文句で被害者やその父親から金銭を脅し取った事案(松山地方裁判所平成22年12月1日)や、飲食代金の請求を受けた被告人が脅迫文言を用いて請求を一時断念させた事案(最高裁判所第二小法廷昭和43年12月11日)につきそれぞれ恐喝罪の有罪判決が下っています。

未遂罪の有無

脅迫罪と違い恐喝罪では未遂罪(刑法250条)があります

つまり、脅迫したり暴行を加えて財物を交付させたり、財産上の利益を不法に得ようとしたが相手がそれに従わずに、財物や財産上の利益を得られなかった場合には、恐喝未遂罪が成立します

たとえば、「この建物の登記を俺が所有者という記載に変更しろ。そうしなければこの建物に火をつけるぞ」と脅したのに、被害者が警察に駆け込んだとすれば恐喝未遂罪で逮捕されることになります。

刑罰の重さ

脅迫罪が、懲役2年以下または30万円以下の罰金といった刑罰であるのに対し、恐喝罪は10年以下の懲役です。

脅迫罪と違い恐喝罪では罰金刑はなく、しかも刑期が大幅に伸びています。いかに重罪かが分かるでしょう。

人を脅して怖がらせた挙句に金品を巻き上げる犯罪ですので、単に怖がらせる脅迫罪とは比べ物にならないほど悪質性が高いと判断されるのです。

なお、脅迫の態様が、相手が抵抗することができないレベルであれば、恐喝罪ではなく、強盗罪が成立します。例えば、ナイフを首に突きつけられて「殺すぞ」と言われているような状況です。強盗罪は5年以上の有期懲役(20年以下)ですので、恐喝罪よりさらに厳しい刑罰となります。

脅迫罪の証拠

警察に犯人を逮捕してもらいたい、あるいは、弁護士対応で解決したい、慰謝料請求をしたいといった場合、脅迫の証拠がなくては警察も動けませんし、弁護士が民事訴訟を起こしても勝ち目がありません

脅迫罪の証拠となり得るものには以下のようなものがありますので、警察や弁護士に相談に行く前に準備しておくべきでしょう。

脅迫罪の証拠となり得るもの
  • 脅迫文言が書かれた手紙、脅迫状
  • 脅迫文言が書かれたメール、LINE、チャット等のメッセージ
  • SNSや掲示板、ブログ等で脅していることがわかる書き込みのスクリーンショット
  • 脅迫電話を受けたときの録音データ
  • 対面で脅されたときに撮影した録画データ
  • 脅迫されている状況を目撃した人の証言
  • 脅迫被害にあっていることを知っている友人や知人、相談を受けた者の証言

また、物的な証拠がない場合でも、誰かに話しておくことで後で刑事・民事の裁判になったときに証言者になってもらえることもあります。その他、警察に相談をしておけば記録に残るため、後で脅迫の物的証拠が手に入って再度警察に行く際に、話の信憑性が増すことで警察が動いてくれる可能性が高まります

脅迫罪の慰謝料・示談金の相場

脅迫事件の被害者になったときに、加害者と示談を結ぶことがあります。脅迫の被害というのは物損ではなく、恐怖心を植えつけられたことに対する精神的損害ですので、示談金の中身は慰謝料ということになります。

しかし、個々の事案によって被害者が受ける精神的苦痛の程度は異なるため、脅迫罪の慰謝料の相場というものは明確には存在しません。ただし、判例(後で紹介します)だけを見れば、おおよそ10万円~60万円程度、100万円を超えない範囲が脅迫罪の慰謝料相場ということになります。

脅迫罪の慰謝料額を決める基準としては、脅迫行為の悪質性の高低や、単発的なのか反復継続して行われたのか被害者が受けた精神的ダメージの程度を総合的に判断します。悪質な脅迫行為が何度も繰り返され、しかも被害者がトラウマになるなどの結果を引き起こした場合は、慰謝料が高額になる傾向は高いでしょう

例えば、反復継続されるストーカー犯罪では、単発的なケースが多い脅迫罪よりも多額の慰謝料が認められやすくなっています。判例では300万円を超える慰謝料請求も認められています(後で紹介します)。

これって脅迫罪になる言葉?ならない言葉?

ここでは、どのような言葉を口にすれば脅迫罪になるのか、またはならないのか、いくつか紹介していきます。

怒鳴る

「邪魔だどけ!!」「ふざけんじゃねぞテメェ!!!」といった、単に”怒鳴る”だけの行為では原則として脅迫罪は成立しません。生命・身体・自由・名誉・財産に対する害悪の告知がなされていないからです。

しかし、その時の状況(時間帯場所相手の態度相手の体格や風貌相手の性別や年齢等)によっては、脅迫罪が成立する可能性もあります

たとえば、深夜の人通りの少ない道で柄の悪いチンピラ風の若者から、「テメェ今俺に眼つけただろ!舐めてんのか!?おいコラ!!!どう責任とるんだ?!!」と大声で怒鳴られたとしたらどうでしょう。具体的に危害を加える台詞ではないものの、「殴られるのでは」「カツアゲされるのでは」と一般的には恐怖を覚えるのではないでしょうか

既に説明したように、脅迫罪は言葉だけでなく態度でも成立し得ますその時の状況を総合的に判断して、”怒鳴る”行為が害悪の告知と看做される場合は脅迫罪が成立することもあります

「警察に言うぞ」「弁護士を立てる」「裁判(訴訟)を起こす」「告訴・告発する」「訴えるぞ」

事件に巻き込まれたり、違法なことを発見したときに警察に通報することは正当な権利ですので、それを口にしたとしても脅迫罪にはなりません

ただし、「不正を告発するぞ」と言った事案につき、判例(大判大正3.12.1)では、「真実の追究が目的ではなく、権利行使の意思がないのに相手を畏怖させる目的で告知した場合」は脅迫にあたるとしています。

ですので、「警察に言うぞ」という言葉が単に相手を怖がらせる目的で、警察に言うつもりがなかったような場合は脅迫罪が成立する可能性があります

同様に、「弁護士を立てる」「裁判(訴訟)を起こす」「告訴・告発する」「訴えるぞ」といった正当な権利の主張をする言葉であっても、それが相手を怖がらせるためだけの目的であれば脅迫罪になり得ます

「天罰が下る」「天災を起こす」「地獄へ送る」

脅迫罪が成立するための害悪の告知は、告知した人が実現可能なものでなくてはなりません。そのため、人間が天罰を下すことは実現不可能ですので脅迫罪は成立しません

また、「天災を起こしてお前の家を破壊してやる」「太陽のフレアで焼き殺してやる」といった言葉も、人間がおよそコントロール不可能なことを口にしていますので、脅迫罪にはなりません

なお、富岡八幡宮の元宮司の男が姉に対して、「今年中に決着をつける、覚悟しておけ。積年の恨み、地獄へ送る」と記した葉書を送りつけたことで脅迫罪で逮捕されたケースがありました。「地獄へ送る」という言葉自体は実現不可能ですが、これまでの男の姉に対する態様や葉書に書かれた文章を総合的に判断してのこととなります。

「家族に危害が及ぶかも」

杉田水脈衆議院議員に対して「報復措置として家族に危害が及ぶかも」という言葉をツイッターに投稿し、脅迫ではと感じた閲覧者が110番するというケースもありました。

この場合、親族に対する害悪の告知がなされているため脅迫罪が成立する案件といえます。似たようなケースに「子供が大変なことになるよ」などの発言も、脅迫罪にあたるといえます。

「事故に気をつけてね」「夜道には気をつけて」

通常の人間関係であれば、普通の挨拶にも思えます。しかし、トラブルになっている相手から言われると同じ言葉でも違う解釈が可能になってしまいます

前後の状況を総合したとき、加害者が「事故を装って加害行為をする」とほのめかしていると判断されるようなことがあれば、脅迫罪に当たる可能性は高まります

同様の意味で、「夜道には気をつけて」「月夜の晩ばかりじゃない」という言葉も、トラブルになっている相手から言われると、「夜の暗くて人気がないときに襲撃されるのでは」という恐怖心が芽生えますので、脅迫罪になる可能性があります

「不倫を会社にばらす」

不倫相手やその配偶者から、「不倫を会社にバラすぞ」と脅されるケースです。

不倫していることが職場の上司や同僚に知れれば、一般的には社内でのその人の社会的評価は下がります。そのため、名誉に対する害悪の告知として、脅迫罪が成立する可能性が高い発言です。

「お前の女をソープに沈めるぞ」

ヤクザや闇金が借金の取り立てでよく遣う言葉ですがこれは脅迫罪にはなりません

「お前の女」という言葉は被害者の交際相手を指していると思われますが、脅迫罪の対象となるのは、自分、または親族に対する害悪の告知が要件となっているからです。

「ヤクザに債権譲渡する」

ヤクザに債権を譲渡する、という言葉は具体的に生命や財産などに対して害悪を告知しているとまでは言えません。

しかし、一般的な感覚を持っている人なら、凄惨な取り立てが始まるのでは、身に危険が及ぶのではなどと恐怖を感じるのが普通でしょう。そのため、脅迫罪に該当する可能性があります

「ヤクザと知り合い」「ヤクザを呼ぶ」

通常は、「俺はヤクザと知り合いなんだよね」と言われたとしても、「ヤバイのと関わっているな。こいつとは距離を置こう」としか思わないでしょう。

しかし、それを口にした人物と揉め事を起こしていたり、粗暴な言動をされている中でその言葉を口にされたら、ヤクザを遣って自分を襲わせることを暗示していると考えられます。そのため、状況によっては、脅迫罪が成立する可能性はあるでしょう

また、「ヤクザを呼ぶぞ」という言葉は、それが口から発せられている時点でトラブルが起きていることは明白です。

ヤクザとは暴力団という名の通り、暴力を背景に人を威圧することを生業としています。ヤクザを呼ばれたら殴られたり殺されたりするのではと一般的には感じることでしょう。そのため、生命や身体に対する害悪の告知として脅迫罪が成立する可能性があります

なお、相手が、指定暴力団の組の名前を具体的に出すなどすれば、発言により真実味が増すことから脅迫罪が成立する可能性は高くなります

「覚えとけよ」「覚悟しておけ」

この言葉だけでは、生命や身体、自由、名誉、財産に対する害悪の告知にはならないため脅迫罪は成立しません。

ただし、「覚えておけよ」「覚悟しておけ」という言葉の前後の会話内容によっては脅迫罪になる可能性はあるでしょう。例えば、「お前には生まれたばかりの子供がいるそうだな。絶対に許さない。覚えておけよ(覚悟しておけ)」といった発言であれば、家族に危害が及ぶことも危惧される内容ですので、脅迫罪が成立する可能性もあるでしょう

「別れるなら死んでやる」

男女問題のもつれでは、「別れるならこの場で死んでやる」などといってなんとか相手を引きとめようとするケースがあります。この場合は脅迫罪とはなりません

別れた相手が自殺したとしても自分に害が及ぶことはなく、脅迫罪の要件となる、身体や生命に対する害悪の告知がなされているとは言えないためです。

「村八分にする」

これはかなり古い判例ですが、昔は集落において「村八分」「絶交」という社会的な制裁が行われていました。交通手段も発達していない状況で、集落の中で絶交や村八分にあってしまうというのは、実生活に多大な影響を及ぼします。

判例では、村八分にするという通告が脅迫罪を成立させるための「害悪の告知」に該当する言葉であると判断しました。

参考:村八分の通告が脅迫罪に該当した判例

脅迫罪の判例

脅迫罪が成立し、有罪判決が下された判例

判例①

大阪府東警察署の刑事課の警部補が、遺失物横領事件の被疑者を取り調べる際に、「報道機関も喜ぶで。最近ネタに困っているらしいから」「お前の人生滅茶苦茶にしたるわ」「お前今ほんま殴りたいわ」といった怒号を浴びせました。これらの言動は、被疑者の名誉や身体に対する害悪の告知であり、脅迫罪が成立するとしました。

裁判官は、本来、国民を守るべき立場にある警察官から脅迫された被害者の精神的苦痛は大きく、懲役刑の選択も考えられるとしましたが結果的には30万円の罰金刑の判決を下しました。

被告人(加害者である警部補)に前科前歴がなく、被害者に対し50万円の被害弁償を申し出るなど反省の態度がみられることや、被告人に生計を頼る妻や4人の幼い子供がいることなどが考慮されたのがその理由です(大阪地方裁判所平成23年4月28日)。

判例②

いわゆる”クレーマー”が度を越えた言動をした事案です。

飲食店で定食のご飯と味噌汁にそれぞれ1匹ずつ虫が混入していたことに立腹した被告人が、同店舗を管轄する会社の社員に対し電話口で「自分にはテレビ局やマスコミに知り合いがいる。マスコミを使って騒ぐぞ」「お前の会社も雪印みたいに大きくして騒ぐぞ」「吉野家みたいに1回潰れりゃいいんだよ」「まもなく株主総会があるんだろ。俺の知り合いにも株主がいるから、この件を持ち出して騒ぐぞ」といった台詞で脅しました。

被告人は、社員の言葉に謝意が感じられなかったため、感情的になって言ってしまったが、あくまでも相手を諭すために出来もしないことを口走っただけで脅迫ではないと主張しました

しかし、判決では、被告人の言動は、嫌がらせや不安感の域で収まるものではなく客観的一般的に人を畏怖させるものであると認定し、脅迫罪が成立するとしました。15万円の罰金刑となっています(東京簡易裁判所平成14年3月6日)。

判例③

酔っ払いが自ら車に接触し、逆切れした事案です。

酔った様子で歩いて向かってくる被告人を見た被害者が運転していた車を停止させていたところ、すれ違う際に車のドアミラーに被告人の手の甲がぶつかり、被告人は被害者に対し、「しばくぞ」等の怒号を浴びせます。被害者は自分の上司に電話連絡をし、上司も現場に駆けつけます。被告人は被害者とその上司に、「いてまうぞ」「ぶっ殺したる」「1000万でも2000万でも取ったる」等の脅迫文言を吐きました。

被告人は、怒鳴ったことは認めたものの脅迫文言については否定しました。しかし、裁判官は被告人の供述は信用できないとし、被害者両名の身体や生命に対して危害を加える発言があったとして脅迫罪が成立するとしました。

なお、この被告人には、恐喝未遂罪や暴行罪の前科があり、また、犯行態様が極めて粗暴であり、被害弁償もなされておらず、反省心も失われているとし、懲役1年5ヶ月の実刑判決を下しました(神戸地方裁判所平成16年1月13日)。

脅迫による慰謝料請求(民事事件)が争われた事例

判例⑤

熊本の県立高校の女子高生がいじめにより自殺し、遺族が加害生徒に慰謝料を求めた事案です。加害生徒が被害者に対し、LINEで、「レスキュー隊呼んどけよ」と送信したことを脅迫行為であると裁判所は認定し、約11万円の慰謝料の支払い命令を出しました。(熊本地方裁判所 令和元年5月22日)。

判例⑥

大阪市の特別養護老人ホームで入居者男性が数分おきにナースコールを繰り返したことに腹を立てた男性ヘルパーが、その入居者をたたいたり、「お前、死ね、殺すぞ」等の暴言を吐いたため、その被害男性が運営法人に慰謝料を請求した事案です。裁判所は慰謝料60万円の支払い命令を出しました。(大阪地方裁判所 平成27年7月2日)。

判例⑦

芸能プロダクションのグラビアアイドルが男性と交際していることに激高した社長が、自分も当該アイドルに恋愛感情があることを伝えたうえ、「最初、殺してやろうと思った」「俺はあらゆる手段を使うよ。人生終わると思うよ。幸せはないよ」「君の人生ぐちゃぐちゃになるよ」などと脅した事案です。裁判所は社長に対して慰謝料30万円の支払命令を出しました。(東京地方裁判所 平成13年12月18日)。

判例⑧

客の男性が、飲み屋を経営している女性に、「気持ちが抑えられないから襲うかも」と脅迫めいた言葉を口にしたり、店への入店を断られているのにもかかわらずつきまとい行為を続けました。女性が裁判所に、面談禁止の仮処分を申し立て、「つきまとわない」とする内容の和解が成立したのに、男性はそれを反故にして被害女性の自宅周辺をうろついた事案です。裁判所は慰謝料300万円の支払い命令を出しました。(大阪地方裁判所 平成12年12月22日)。

判例⑨

助教授が、不安神経症で悩む大学院生の女子の不安に乗じて性的関係を結び、被害女性の自宅にしつこく何度も電話をかけたり、女性が関係解消を求めたところ、自殺をほのめかす電話をかけるなどをした。さらに別れを切り出されたことの報復として論文の書き直しを命じるなどをした事案です。裁判所は慰謝料750万円の支払い命令を出しました。(仙台地方裁判所 平成11年5月24日)。

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