遺言書(いごんしょ・ゆいごんしょ)とは、ある人が死亡する前に、自分の死後に親族の間で相続トラブルが発生しないように残したり、自分の財産をどのように分配するのかを指定するために作る書面のことを言います。

実務では遺言書に関して、つぎのような質問をよく受けることがあります。

遺言書に関するよくある質問
  • 「遺言書(遺言状)は自分で書けるんですか?」
  • 「自分で書く場合、難しくないの?」
  • 「遺言が無効になることがあるって聞いたけど?」
  • 「遺言書の内容を他人に知られないようにする方法は?」
  • 「遺言書って、どんなケースで残すべきなの?」

遺言書を残す理由はそれぞれですが、遺言書が法律的に有効となるためには、法律の定める条件を備えておくことが必要です。
せっかく自分で遺言書を作っておいたにもかかわらず、条件不備のため法律的に無効とされてしまった場合には相続人の間でトラブルになる可能性が出てきてしまうでしょう。

遺言書を作る場合、一番手軽なのは「自筆証書遺言」です。これは法律の条件を満たせば、自分一人だけで比較的簡単に作成することができます。
しかし法律の条件を満たしていない場合には遺言が無効となってしまいますし、「遺留分」を侵害した場合には、かえって相続人間のトラブルを助長することにもなりかねません。

自筆証書遺言は、偽造や変造など不正行為を受ける可能性もあるため、その作成や保存・保管は慎重に行う必要があります。

今回こちらでは、遺言書を残すべきケースや遺言書の正しい書き方、トラブルを防止するための遺言内容の記載法などについて解説させていただきます。

この記事をお読みいただければ、法律的に有効な遺言書が書けるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。

1.遺言書を残したほうが好ましい4つのケース

遺言書を作っておいた場合、自分の死後に相続人などの間でトラブルが発生することを防止できる可能性があります。
しかし、だからといって、どんなケースでも遺言が必要というわけではありません。
場合によっては、遺言書を残す必要性の少ない事例もあるでしょう。

ただしつぎのようなケースでは、遺言書を書いておくと遺言者の死後、相続人が相続に関する手続きをスムーズに行えるなど多くのメリットが考えられます。

遺言書を残した方が好ましい4つのケース
  • (1)結婚してはいるが子供がいないケース
  • (2)自分の家業を特定の相続人に継がせたいケース
  • (3)相続財産を渡したくない相続人がいるケース
  • (4)法定相続人以外に遺産を渡したいケース

このようなケースの場合、遺言書を残しておくと複雑となりがちな相続問題をスッキリと解決することができるのでおすすめです。

(1)結婚してはいるが子供がいないケース

結婚して配偶者がいるけれど、夫婦の間に子供がいない場合、残された配偶者のために遺言書を書いておくことは非常に有効です。

子供のない人が死亡した場合、民法の規定によって、被相続人の父母または兄弟姉妹などと配偶者が相続人となります。法律上、相続人となることができない人は、基本的に相続財産をもらうことはできません。

この場合、相続財産の中にある具体的な財産について、実際に誰が相続することになるのかを決定するために遺産分割協議をする必要があります。遺産分割協議には、被相続人の親または兄弟姉妹だけでなく配偶者も参加する必要があります。

しかし、遺産分割協議における被相続人の配偶者の立場は、場合によっては非常に弱いものになりがちです。その結果、本来被相続人の配偶者として認められるはずの権利さえ満足に認められなくなる恐れも否定できません。

そのような事態を避けるためには遺言書を書き、配偶者が自分の死後も生活に不自由することのないように、十分な相続財産を受け取ることができるように取り計らっておくことが大切です。

(2)自分の家業を特定の相続人に継がせたいケース

自分で何らかの事業を営んでいる場合、その家業を長男など相続人の一部だけに継がせたいと思うケースもあります。

このような場合には遺言書を書き、家業に関する財産を一部の相続人に相続させると便利です。遺言では、相続人に対してどの財産を相続させるかという相続分の指定をすることができるからです。

(3)相続財産を渡したくない相続人がいるケース

遺言者の親族関係によっては、自分の死後、相続人となる者に自分の財産を渡したくないと思う事例もたくさんあります。

このような場合には遺言書を作り、その相続人の相続分をゼロにしたり、相続人から廃除することを検討するとよいでしょう。
ただし、一部の相続人には法律上「遺留分」が認められているため、これを侵害する相続分の指定は遺留分侵害額請求権行使の対象となる可能性があります。

遺留分を侵害する相続分の指定が行われた場合、相続人間でトラブルとなる可能性が高くなってしまうので注意が必要です。

(4)法定相続人以外に遺産を渡したいケース

民法上、相続財産を受け取ることができるのは、原則として法定相続人に限られています。
もし法定相続人以外に遺産を譲り渡したい人がいる場合には、遺言書にその旨を記載することにより遺贈することが認められています。「遺贈」とは、遺言によって贈与することを言います(後述)。

参考:「遺贈とは?相続人以外に遺産を譲るための2つの方法と手順を解説」

2.遺言書の記載例

遺言書の書き方をご覧いただく前に、実際の遺言書の記載例をご紹介します。
遺言書がどのようなものなのか、ある程度イメージしていただければと思います。

遺言書の記載例

遺言書

私、甲野太郎は、つぎのとおり遺言する。

(特定の相続人に遺産すべてを相続させる場合)
第1条 相続人甲野花子に相続財産のすべてを相続させる。

(各相続人の相続分を指定する場合)
第1条 相続分を以下のとおり指定する。
甲野花子には、現金〇〇万円を相続させる。
甲野一郎には、預金(○○銀行〇〇支店の普通預金、口座番号○○○○)を相続させる。

(複数ある相続財産中、一部の財産について指定する場合)
第1条 相続分を以下のとおり指定する。
甲野花子には、つぎの不動産を相続させる。
1. ○○県○○市○○町○○丁目○○番の土地
2. ○○県○○市○○町○○丁目○○日番地、家屋番号○○番の建物
甲野一郎には、その他すべての財産を相続させる。

(遺言執行者を指定する場合)
第1条 つぎの者を遺言執行者に指定する。
住  所 ○○県○○市○○町○○丁目〇〇番〇〇号
職  業 ○○
氏  名 〇〇〇〇
生年月日 昭和○○年〇〇月○○日

令和〇〇年〇〇月○○日

住  所 ○○県○○市○○町○○丁目○○番地
遺 言 者 甲野太郎 (印)

遺言書の内容としての基本は、以上のようなイメージとなります。
あとは、それぞれの事情に応じて必要事項を付け加えていけばよいでしょう。

参考:「遺言執行者とは|遺言執行者が必要なケースや選び方・費用等を解説」

3.遺言書の3つの形式

民法上、遺言書の作成方法には3つの形式が認められています。
「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」です。

これら3つの遺言書では、つぎのように作成方法が異なります。

(1)自筆証書遺言の場合

「自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)」とは、遺言の内容・作成日・氏名を遺言者がすべて自分で手書きをして、最後にハンコを押すことで作ることのできる遺言書です(民法968条1項)。
ただし、財産目録に関しては2019年の法改正により、一定の条件のもとにパソコンからプリントアウトしたものを使用することが認められることになりました。

自筆証書遺言は、このように自分で文字を書くことができて押印できる状態であれば、自分一人だけで作成することが可能です。
ただし、遺言の効力が発生した場合(遺言者の死亡時)には、家庭裁判所で「検認」手続きをする必要があります。

自筆証書を書く時の注意点

自筆証書遺言を書く場合には、遺言が無効とならないようにするため、つぎのポイントを押さえることが非常に重要です。

①書面に全文を自分で手書きする

遺言の内容をすべて自分で手書きします。他人による代筆やパソコンやワープロで打ち出したものは利用できません。ただし、財産目録はプリントアウトしたものでも使用可能となっています。

②動画や録音したものは無効

法律上「自筆証書遺言」として遺言の効力が認められるのは、あくまでも書面の形で残されていることが必要です。

③作成日を明記する

民法上、遺言書には、その作成日を手書きする必要があります。

④署名・押印する

自筆証書遺言の最後には、遺言者であることを明示するために遺言者の氏名を手書きし、押印することが法律の条件です。なお、押印に使うハンコは認印や母印でも構いませんが、実印を押しておくほうが確実でしょう。

なお、署名の横に押印がなかったとしても、つぎの場合には遺言書を有効とした判例があります。

  • 自筆証書遺言を入れた封筒の封印として押印されているケース(最判平成6年6月24日)
  • 遺言書が複数枚に及ぶ場合に契印として押印されているケース(東京地裁平成28年3月25日)

氏名に関しては、遺言者本人の同一性が確認できればよいので、「芸名」や「ペンネーム」などでも有効とされることがあります。

⑤遺言書は単独で作成すること

遺言書はひとり1つ作成する必要があります。たとえ夫婦であり、遺言内容がまったく同じであったとしても、夫婦両名の遺言書を1通作るということは認められません。遺言書が2人以上のために作られた場合、遺言は無効となりますので注意が必要です。

なお、1枚の遺言書であったとしても、それぞれ完全に独立した形で遺言が書かれている場合には遺言書として有効と判断された事例もあります。

自筆要所遺言の4つのメリット

自筆証書遺言には、つぎのように3つのメリットがあります。

  • ①自分一人で簡単に作成できる
  • ②作成のために費用が掛からない
  • ③修正や取り消しすることが簡単

自筆証書遺言の5つのデメリット

メリットの反面、自筆証書遺言には、つぎのように5つのデメリットがあります。

  • ①作り方を間違えた場合、無効となる可能性がある
  • ②遺言者の死亡後、家庭裁判所で「検認」を受けなければならない
  • ③検認を受けずに開封した場合、相続人が過料を科されることがある
  • ④手が不自由な場合、利用できないことがある
  • ⑤偽造・変造・紛失により、遺言した意味がなくなってしまう可能性がある

(2)秘密証書遺言の場合

民法では自筆証書遺言に似た遺言の方式として、「秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)」という遺言書も認められています。秘密証書遺言とは、その名前のとおり、遺言の内容を誰にも知られたくないような場合に利用できる遺言方式です。

秘密証書遺言のイメージとしては、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間という感じでしょうか。まずは自分で遺言書を書き、それを公証役場の公証人に遺言者本人の遺言であることを証明してもらうという遺言方式となります。

秘密証書遺言のメリット・デメリット

秘密証書遺言に関するメリット・デメリットをまとめると、以下の表のようになります。

秘密証書遺言のメリット 秘密証書遺言のデメリット
  • ①遺言書が本人によって作成されたものであることを証明できる
  • ②遺言内容を秘密にできる
  • ③遺言書の偽造や変造の恐れがなくなる ①遺言書自体は本人だけで作るので無効となる恐れがある
  • ②公証人も遺言内容までは証明できない
  • ③家庭裁判所で検認が必要
  • ④公証人手数料として11000円が必要

秘密証書遺言の作成手順

秘密証書遺言は、つぎのような手順で作成することができます。

秘密証書遺言の作成手順
①遺言書を作り、署名・押印をする。自筆証書遺言の作成と同じように遺言書を作ります。

②遺言書を封筒に入れ、遺言書の押印に使用したハンコで封印をする。

③公証役場で公証人と証人2人以上の前に封筒を提出し、自己の遺言であること及び住所・氏名を述べる。

④公証人が、提出された遺言書の封筒にその日付及び遺言の申述(自己の遺言であること及び氏名住所)があったことを記載し、公証人、証人、遺言者本人が封筒に署名押印する。

秘密証書遺言の作成には、2人以上の証人や公証人などがかかわるため、遺言が偽造・変造・隠匿される恐れが非常に少なくなります。
また、遺言者の生前において遺言内容を相続人に知らせたくない場合には、最適な遺言方法となります。

参考:「秘密証書遺言とは?費用や具体的な作成手順と4つのメリットを解説」

(3)公正証書遺言の場合

「公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)」とは、公証人によって作られる遺言書のことを言います。
自筆証書遺言とは異なり、遺言者はどのような遺言をしたいのかについて公証人に伝え、それを基に公証人が遺言書を作ることになります。

公正証書遺言は自筆証書遺言と違って、公証人という法律の専門家が関与するため、遺言が無効となる可能性が極めて低くなるというメリットがあります。
また、遺言者死亡後、家庭裁判所で遺言書を検認するという手続きも不要です。

公正証書遺言を作成する場合のメリットとデメリットをまとめてみましょう。

公正証書遺言のメリット 公正証書遺言のデメリット
  • 遺言が無効となる可能性が極めて低い
  • 遺言者の意思が正確に実現される
  • 偽造や変造、遺言書を隠される心配がない
  • 検認手続きが不要 ・作成に費用が掛かる
  • 完成までに手間や時間を要する
  • 2人以上の証人を見つける必要がある
  • 遺言書の存在や内容を秘密にできない

公正証書遺言は、その名前のとおり公証人によって作られる遺言書であるため非常に証明力が高く、遺言内容に疑いを差しはさむ余地がありません。
上記のように多少のデメリットはありますが、遺言の方法としてはもっとも確実性の高いものと考えてよいでしょう。

ただし、公正証書遺言を作成するためには、公証人との打ち合わせなど一定の時間がかかります。このため遺言をする緊急性が高い場合には、その他の方式による遺言を検討する必要があります。

公証人とは?

「公証人(こうしょうにん)」とは、原則として、判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者で、公募に応じた者の中から、法務大臣によって任命された公務員のことをいいます(公証人法13条)。

なお、現在は、多年法務事務に携わり、法曹有資格者に準ずる学識経験を有する者で、かつ、検察官・公証人特別任用等審査会の選考を経て公募に応じた者も、公証人となることができるようになっています(公証人法13条の2)。

公証人は「公証役場(こうしょうやくば)」で公証事務を行っています。公証役場は日本全国に存在しますので、公正証書遺言を作成する場合には、最寄りの公証役場を利用するとよいでしょう。

参考:「全国の公証役場一覧」(日本公証人連合会)

公正証書遺言を作成するときの手順

上記のように、公正証書遺言は公証人によって作成される遺言書です。そのため、公証人によって指定される以下のような手順に従って遺言書が作成されることになります。

(1)遺言内容を言葉で伝える

公正証書遺言を作るためには、遺言の内容を公証人に伝える必要があります。
遺言内容を伝える方法としては、民法969条によって「口授」することとされています。「口授」とは、口頭で伝えることを指します。
つまり、基本的には公証人の質問に答える形で遺言内容が決まってくると考えてください。

ただし事前に自分なりに考えた遺言内容がある場合には、メモに書き留めておき、公証役場に持っていってもよいでしょう。

(2)証人を2人見つける

公正証書遺言を作るためには、証人2人の立ち合いが必要になります。このため、事前に証人となってくれる人を2人見つけておく必要があります。
ただし、つぎの条件に該当する人は証人となれません(民法974条)。

証人になれない者
  • ①未成年者
  • ②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  • ③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

公正証書遺言作成後に、証人が上記に該当する人だったことが判明した場合には公正証書遺言自体が無効となる可能性があります。
証人を選ぶ場合には、くれぐれも注意してください。

もし、証人が見つからない場合には弁護士など法律の専門家や公証人に相談してみるとよいでしょう。また、公証役場でも相談を受けてくれることがあります。

参考:「公正証書遺言の4つの効果|自筆証書遺言との違いと作り方を解説」

公正証書にかかる費用

公正証書遺言を作る際には、公証人へ手数料を支払う必要があります。公証人の手数料を定める「公証人手数料令9条」では、書面上表示される遺産の額によって手数料が変動することになっています。

公証人手数料令9条(法律行為にかかる証書の作成の手数料の原則)
「法律行為に係る証書の作成についての手数料の額は、この政令に特別の定めがある場合を除き、別表の中欄に掲げる法律行為の目的の価額の区分に応じ、同表の下欄に定めるとおりとする。」

公証人に支払うことになる手数料は、具体的にはつぎのような金額となります。

公証人に支払う手数料(公証人手数料令の別表から引用)
法律行為の目的の価額金額(公証人への手数料)
100万円以下のもの5000円
100万円を超え200万円以下のもの7000円
200万円を超え500万円以下のもの11000円
500万円を超え1000万円以下のもの17000円
1000万円を超え3000万円以下のもの23000円
3000万円を超え5000万円以下のもの29000円
5000万円を超え1億円以下のもの43000円
1億円を超え3億円以下のもの43000円に超過額5000万円までごとに13000円を加算した額
3億円を超え10億円以下のもの5000円に超過額5000万円までごとに11000円を加算した額
10億円を超えるもの249000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

公証人手数料の具体的計算例

3000万円の財産を持っている人が、公正証書遺言で遺産全額の分配方法を指定した場合、公証人にかかる手数料はつぎのようになります。

①相続人が1人の場合

遺言者が遺産である3000万円全額を1人の相続人に相続させる場合、上記「別表」により公証人手数料は23000円となります。

②相続人が2人である場合

遺言者が遺産3000万円を2人の相続人に以下のように相続させる場合、相続人それぞれの手数料は上記「別表」により、つぎのようになります。

相続人A2000万円相続 → 公証人手数料:23000円
相続人B公証人手数料:17000円

よって、公証人手数料は合計40000円かかることになります。

③相続人が3人である場合

遺言者が遺産3000万円を3人の相続人に以下のように相続させる場合、相続人それぞれの手数料は上記「別表」により、つぎのようになります。

相続人A1500万円相続 → 公証人手数料:23000円
相続人B750万円相続 → 公証人手数料:17000円
相続人C750万円相続 → 公証人手数料:17000円

よって、公証人手数料は合計57000円かかることになります。

このように公証人手数料は、遺産の総額について計算されるのではなく、遺産を譲り受ける人ごとに計算されることになるので注意が必要です。
公正証書遺言上、遺産を譲り受ける人の数が増えれば増えるほど、公証人手数料は高額になることを覚えておいてください。

証書の枚数によって手数料が加算されることも

作成される公正証書による遺言書の枚数が、法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては3枚)を超えるときは、1枚超えるごとに250円が加算されます(手数料令25条)

公正証書遺言を作るときに必要な書類

公正証書遺言を作るときには、公証人に以下の書類を提出・提示する必要があります。

①遺言者の本人確認資料

原則として、遺言者の印鑑証明書と実印が必要です。

②遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本(戸籍全部事項証明書など)

遺産を譲り受ける者が甥、姪など、その本人の戸籍謄本だけでは遺言者との続柄が不明の場合には、その続柄の分かる戸籍謄本も必要となります。

③受遺者の住民票

遺産を遺贈する場合には、受遺者(遺言者の財産の遺贈を受ける者)の戸籍謄本ではなく、住民票の写しが必要となります。
なお、受遺者が法人の場合は、その法人の登記簿謄本が必要です(ただし、公に認知されている公益団体の場合は不要)。

④固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書

相続または遺贈の対象物の中に不動産が含まれている場合には、その不動産の固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書が必要です。

⑤不動産の登記簿謄本

遺言書中で相続・遺贈の対象になる不動産を特定するため、不動産の登記簿謄本(登記事項全部証明書)が必要です。ただし、遺言書中で不動産の特定をしない場合は不要となります。

⑥証人の確認資料

遺言に関する公正証書を作成する場合、その場に立ち会う証人2人が必要ですので、その方について、住所、職業、氏名、生年月日がわかる資料が必要となります。
なお、公正証書を作成する際に必要となる証人は、誰でもなれるものではなく、推定相続人、受遺者とそれぞれの配偶者、直系血族等の利害関係人や未成年者等は証人になれません。適当な証人がいないときは、公証役場で証人を手配することもできますので、公証役場に相談するとよいでしょう。

⑦遺言執行者の特定資料

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する者であり、遺言執行者を指定する場合には原則として遺言書に記載しておく必要があります。
通常相続人又は受遺者が遺言執行者になりますのでその特定資料は不要です。しかし、それ以外の方を遺言執行者とする場合は、その方の住所、職業、氏名、生年月日が確認できる資料の提示が必要となります。

⑧その他必要書類

遺言内容などによっては、上記以外にも書類が必要となることがあります。
たとえば銀行預金を相続させる場合には、銀行通帳のコピーなどが必要とされることがありますので、公証人の指示に従うようにしてください。

引用元:「(公正証書遺言作成の際の)必要書類」(日本公証人連合会)

4.遺言以外の選択肢|成年後見・遺言信託・家族信託

遺言では、遺言者の死亡後に遺産をどのように分配するかなどについて指定することができます。しかし、遺言に類似したものとして、現在では「遺言信託」や「家族信託」などの制度があります。
遺言には民法によってできることが限定されているため、遺言者の事情によっては利用しにくいケースもあるでしょう。

遺言は、遺言者が死亡した時から効力が発生します。つまり、遺言者が死亡する前に認知症などにかかってしまった場合には、遺言者の財産をどうするかについて指定することができません。

認知症にかかり自分で自分の財産を管理することが難しくなってしまうことは、世間では非常によく見かける事例です。
そのような場合に、自分の財産をどのように使うのかなどに関してあらかじめ備えるためにも、遺言にとらわれることなく、成年後見制度や遺言信託、家族信託などの利用を柔軟に検討する必要があるかもしれません。

参考:「成年後見人とは|成年後見の種類と利用手順・費用などについて解説」

参考:「確実に遺言執行するために|遺言信託のメリットや費用・利用手順」

参考:「家族信託とは?9つのメリットと家族信託を活用すべき4つの事例」

5.特別方式の遺言について

民法上、実は遺言には2種類の方式の遺言の類型が定められています。「普通方式の遺言」と「特別方式の遺言」です。
これまでご紹介してきた遺言方法は、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類ですが、これらはすべて「普通方式」による遺言でした。一般的に利用される遺言書は、この普通方式で作られるものがほとんどです。

遺言は非常に重大な法律上の行為となるため、その方式が厳格に定められており、少しでも法律上の条件を欠いた場合には無効とされることがあります。
しかし、一定の差し迫った事情がある場合などには、作成方式の厳格さを多少緩めても遺言を認める必要性がある場合があります。

特別方式の遺言とは、そのような特別な事情がある場合に限定して効力の認められる遺言方法とされており、つぎの4つのパターンが定められています(民法976条~979条)。

特別方式の遺言の種類と条件
一般危急時遺言病気やケガ、その他の事情により死亡の差し迫った状態にある場合、3名以上の立会人のもとで認められる(民法976条)
一般隔絶地遺言伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にある人は、警察官1人及び証人1人以上の立会いのもとで遺言書を作ることができる(民法977条)
船舶隔絶地遺言船舶中に在る人は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いのもとで遺言書を作ることができる(民法978条)
難船危急時遺言船舶が遭難した場合において、当該船舶中にあって死亡の危急に迫った人は、証人2人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる(民法979条)

特別方式による遺言の効力

ご覧いただいたように特別方式による遺言は、普通方式の遺言に比べてかなり簡単に行うことが認められています。
しかしその分、遺言の効力が制限される可能性があるので注意が必要となります。

特別方式による遺言をした人が、普通方式の遺言をすることができる状態になって以降6か月以上生存する場合、特別方式による遺言は無効とされることになっています(民法983条)。

6.遺言でできる8つのこと

民法上、遺言では主に相続に関連する8つの行為をすることが認められています。

(1)相続分の指定

法定相続人がもらえる相続財産の割合(相続分)は、民法によってきめられています(民法900条)。これを「法定相続分」といいます。

しかし、被相続人は生前において遺言しておくことによって、それぞれの相続人の相続分を自分の自由に指定することが認められています。これを法定相続分に対して、「指定相続分」といいます。

相続財産は、元はといえば被相続人の財産であるため、指定相続分をどのように定めようと自由とされています。しかし、一定の相続人には民法上「遺留分」が認められています。
このため、相続分の指定によって相続人の遺留分が侵害された場合には、その相続人には遺留分侵害額請求権が認められることになるので注意が必要となります。

(2)遺産分割の方法の指定・分割の禁止

遺言では、相続人間において相続財産をどのように分割するのかについて指定することが認められています。分割方法の指定は遺言者自身が行うだけでなく、第三者に委託することも認められています(民法908条)。

また、相続開始後5年を超えない範囲で遺産分割することを禁止することも可能です。

(3)遺贈

相続が発生した場合、遺産は原則として被相続人の一定の親族である相続人に受け継がれることになります。
しかし、被相続人は生前に遺言しておくことによって、遺産を相続人以外の第三者に贈与することが認められています。遺言による贈与ということから、これを「遺贈」といいます。

なお、遺贈は相続人以外の第三者だけでなく、相続人に対して行うことも可能です。

参考:「遺贈とは?相続人以外に遺産を譲るための2つの方法と手順を解説」

(4)廃除

相続人の中に被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたり、著しい非行のある者がいる場合、被相続人にはその者を相続人から除外することを家庭裁判所に申請することが認められています。これを「相続人の廃除」といいます。

相続人を廃除する方法としては、生前に行う方法と、遺言によって被相続人の死後に手続きを行うという2つの方法があります。

遺言によって相続人の廃除を行う場合には、その旨を遺言書に明記することになります。

なお、相続人の廃除と似たものに「相続人の欠格」という制度があります。
相続人の廃除は、あくまでも被相続人(遺言者)の希望によって行われるものです。しかし相続の欠格は、相続人に一定の事由(「相続欠格事由」)がある場合、その相続人の相続権が当然に失われることになる制度である点で大きく異なっています。

参考:「相続人の廃除とは?相続させないための3つの条件と手続きを解説」

(5)認知

法律上正式な夫婦関係にない男女の間に子供が生まれた場合、父親と子供の間には法律上、親子関係が発生することがありません。
父親と子供は事実上の親子関係ではありますが、何も手続きをしない場合、法律上両者には何の関係もありません。

「認知」とは、事実上の親子関係を法律上でも認めてもらうための手続きです。認知によって、認知した者(父親)と子供の間には法律上の親子関係が発生するため、子供には父親の相続権が認められることになります。

なお、認知は遺言によってだけでなく、被相続人の生前においても行うことができることとされています。

(6)相続人間の担保責任

相続したにもかかわらず、一部の相続人の取得した相続財産に何らかの欠陥があり、その相続人が損失を受ける事例があります。このような場合、相続人間の公平を図るため、ほかの相続人は相続分に応じて被害を受けた相続人の損失を補填(穴埋め)する必要があります。これを「共同相続人間の担保責任」といいます(民法911条)。

被相続人は生前、遺言をすることによって、この共同相続人間の担保責任を民法が定めているのとは異なる内容で定めることが認められています。担保責任の負担義務を免除することも可能です。

(7)遺言執行者の指定など

遺言では、遺言内容が間違いなく実現されるように遺言執行者を定めることが認められています。
通常の場合、遺言の執行者は相続人や受遺者となることが多いのですが、それでは遺言内容の実現がうやむやになる恐れがあることが考えられる場合があります。

このような場合、遺言者は遺言書で遺言執行者を指定することができます。遺言執行者を直接指定しない場合には、遺言執行者の指定を第三者に委託(委任)し、間接的に遺言執行者を指定することも可能です。

(8)未成年後見人の指定など

自分が死亡すると子供の親権者がいなくなってしまう場合、その親権者は遺言によって自分の死後、子供の後見人となる人を指定することが認められています。

誰を後見人にするか決まっていない場合には、それを決定することを誰かに委託することも可能です。

7.遺言書を書く時の注意点

自分の死後、相続人の間でトラブルが起こらないようにするためには、遺言書を作る際にはつぎのような事項に注意することが大切です。

(1)相続人が誰になるのか確認する

遺言書を作成する際には、自分の死後、相続人が誰になるのか確認しておくことは非常に重要です。
遺言によって各相続人の相続分を指定する場合には、だれに対してどの財産を相続させるのかを把握しておかなくてはいけません。
また、相続財産を渡したくない相続人がいる場合には、その相続人に遺留分が認められるのかどうかに関してもチェックし、対策を検討しておく必要があります。

(2)相続財産をすべて記載する

遺言によって相続分を指定したり遺贈をする場合には、遺言書には相続財産すべてを明記することが大切です。
一部の財産に関して記載漏れなどがある場合、それが原因となって思わぬトラブルに発展する可能性があるからです。

相続財産がある程度以上多い場合、遺言書に「財産目録」をつけることが一般的です。
財産目録には、各財産に関してできるだけ具体的・詳細に記載するようにして下さい。その際には、つぎのような事柄を明記しましょう

預貯金がある場合

財産目録に預貯金を記載する場合には、すべての銀行名、支店名、預貯金口座の種別(「普通口座」など)、口座番号などを記載します。

有価証券がある場合

銘柄ごとに株数や取扱証券会社名、証券口座名などを記載します。

土地を持っている場合

相続の対象となる土地を特定するための情報を記載します。
具体的には、土地の「所在」「地番」「地目」「地積」を明記するのが望ましいといえます。
これらは土地を購入した際に作成された「登記済権利証」(いわゆる「権利書」)または、法務局の登記簿(登記事項証明書)を確認すればわかります。

建物を持っている場合

自宅など建物を持っている場合には、その建物を特定するための情報を記載することになります。
具体的には、「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を明記します。
これらも土地の場合と同様、「登記済権利証」や登記簿などを確認することでわかります。

マイナスの財産も明確に記載する

相続の対象となる財産は、預貯金や不動産などプラスの物ばかりではありません。借金などマイナスの財産も相続の対象となります。

遺言者の死後、相続人が相続財産の中にマイナスの財産があることを知らずに相続してしまった場合、大変なことになる可能性があります。
相続財産中、プラスとマイナスの財産を通算してマイナスになる場合には、相続人にとって相続は負担になってしまいます。仮に通算してプラスの財産のほうが多かったとしても、それがわずかだった場合には、いっそのこと相続などしないほうがよいと判断されるかもしれません。
そのような場合には、相続の放棄をする必要がありますが、そのためには相続人は相続財産に関して詳細な情報を知っていなければいけません。

相続財産に関して必要な情報を与え、相続人に相続するかどうかに関する判断材料を提供するためにも、相続財産に関してはプラスだけでなくマイナスの財産も明記しておくことが大切です。

(3)相続人に対する「思い」を記載する

遺言書で行うことのできる法律上の行為は、これまでご覧いただいたように主に8つの事柄に限定されます。
しかし、だからといってそれ以外のことを記載できないというわけではありません。

遺言書には、自分がどうして遺言したのか、どうしてこのような遺言内容になったのか、相続人への感謝の気持ちなどを記載することも可能です。
遺言書にかかれる、このような遺族に向けたメッセージのことを「付言」といいます。

遺言書を書く場合には、必要に応じて付言を記載しておくことをおすすめします。
遺言書に付言を記載することで、相続人間でのトラブルを防止することも期待できます。

(4)遺言の封書には検認が必要なことを明記する

遺言を公正証書で作った場合には不要ですが、それ以外の自筆証書・秘密証書で作成した場合には、検認手続きが必要となります。
「検認手続き」とは、相続人などが遺言書の内容などの確認のために家庭裁判所で行われる手続きのことを言います。相続人は、遺言者の死亡後すぐに家庭裁判所で検認手続きを受ける義務があり、違反した場合には罰則(5万円以下の過料)を受ける可能性もあります。

そのような罰則を受けることのないように、遺言書を入れた封筒には「相続開始後、家庭裁判所で検認すること」などの文言を記載しておくことをおすすめします。

遺言書について知っておくべき2つのポイント

これまで遺言書の作成方法などをご紹介してきましたが、最後に遺言書に関して知っておきたいポイントをお伝えします。

(1)遺言書はいつ書くべきか?

法律上、遺言書を書くべき義務はありません。つまり、遺言書を書くかどうかは、完全に自分の自由ということです。
しかし、ある程度以上の財産が有ったり、自分の死後トラブルが発生する可能性が考えられるような場合には積極的に遺言書を作成しておくべきでしょう。

人間は、いつ死ぬかわかりません。遺言の必要性を感じているならば、時を移さず、すぐに遺言書を書くべきです。

死期が近づくと、人間は身体が不自由になったり判断能力が衰えてしまうものです。遺言書は、なるべく自分が元気なうちに備えておくことが望ましいといえます。

(2)遺言はいつでも変更・取り消し可能!

遺言は基本的に、いつでも変更や取り消しが可能です。遺言の全部を変更または取り消すだけでなく、一部についての変更・取り消しをすることもできます。

万一、将来において違う内容の遺言をしたくなった場合には、遺言の変更や取り消しなどは原則として遺言者の自由に行うことが可能です。とりあえず現時点における遺言者の意思で遺言書を書いておき、将来気持ちが変わった場合には、その都度変更などを行えばよいでしょう。

遺言の変更・取り消し方法

遺言を変更・取り消しする場合には、以前の遺言書を廃棄し、必要に応じて新しい遺言書を書くことになります。

以前の遺言書を破棄しなかった場合でも、新しく作成された遺言書に以前の遺言書の内容と違う部分がある場合には、その違っている部分に関しては新しい遺言書によって変更・取り消しが行われたという扱いになります。

複数の遺言書がある場合

複数の遺言書が存在している場合には、もっとも日付の新しいものが遺言書として有効とされます。
ただし、古い遺言書でもその後に作成された遺言書と内容の食い違いがない部分に関しては、古いものでも遺言書として有効とされますので注意してください。

公正証書遺言の取り消し方法

公正証書で遺言を作った場合、話は少し複雑になります。公正証書遺言は、公証役場に原本が保存されているため、たとえ自分の所有している遺言書を破棄したとしても公証役場に遺言書が残ったままとなるからです。
この場合、公証役場にいって遺言書を破棄してもらうことはできない扱いとなっています。

新しい遺言書を書く

公正証書遺言を取り消すためには、新しい遺言書を書く必要があります。
その時に新しく作る遺言書は、公正証書によるものに制限されません。もっとも簡単に作ることのできる自筆証書遺言でも、秘密証書遺言によるものでも構いません。とにかく新しく作られた遺言書によって、前回の遺言内容を取り消す旨が明示されていれば公正証書遺言を取り消すことが可能です。

まとめ

今回は、遺言をしておくべき4つのケースや遺言方法などに関してご紹介しました。

人はだれでも死ぬものであり、死んだ場合には相続が発生することになります。相続は金銭が絡む問題だけに、相続人間で大きなトラブルに発展する事例が世間にはたくさんあります。

しかし、被相続人が生前に遺言を残しておくことによって、相続人間のトラブルの大半は未然に防ぐことが可能です。
ご自分の死亡後、親族間のトラブルを防止したい場合には遺言書を作っておくことをおすすめします。

もし、遺言書の書き方などに疑問がある場合には、弁護士に相談されてはいかがでしょうか?
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