2018年、相続関連法が改正・整備されることが決定しました。早くも2019年から徐々に相続に関するルール変更が実施されています。

今回の改正における最大の注目点ともいうべき制度が配偶者居住権という権利の創設です。一定の条件を備えることにより、被相続人の配偶者に相続開始時における居住不動産への生涯にわたる居住権を認めようという権利です。

配偶者居住権とは今回まったく新しく作られたものであるため、どういう権利なのかについて、みなさんも疑問に思うのではないでしょうか?

「配偶者居住権とはいったい、どのような権利なのか?」

「どんな場合に居住権が認められるのか?」

「居住権が認められた場合、どんなメリットがあるのか?」

「いつから施行されるのか?」

などなど、たくさんの疑問をお持ちだと思います。

 今回は、新設されることになった「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」についてご紹介します。

上記のような各疑問について、しっかり解説いたしますので最後までお読みいただければ幸いです。

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 配偶者居住権の新設

今回の法改正における最大の注目ポイントとも言えるのが、この「配偶者居住権」の創設です。

被相続人の配偶者に新たに居住権を認めることによって、その保護を図る趣旨となっています。

 配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、被相続人の配偶者にのみ認められる権利です(民法1028条)。そのほかに相続人がいた場合でも、被相続人の配偶者以外には認められません。

遺産分割などによって配偶者居住権を取得した場合、その配偶者は対象となる不動産に原則として一生無料で住み続ける権利が認められることになるのです。

制度趣旨

配偶者居住権は、被相続人の死亡によって法律的に弱い立場に追い込まれがちな配偶者の保護を目的として創設された権利です。被相続人の配偶者は、相続の開始によって最悪の場合には、長年住み慣れた家から出ていかなければならなくなる可能性があったのです。

最悪の場合、退去を求められることも!

従来の相続では相続人間における遺産分割協議の結果、被相続人の配偶者が居住用不動産の所有権を取得しなかった場合、最悪住んでいる家から退去しなければならなくなることがありました。配偶者が居住用不動産の所有権(共有持分権)を取得しない以上、そこに住み続ける法律上の権利が認められなかったためです。

 配偶者の保護が図られることになった

被相続人の配偶者は、ある程度以上の高齢であることが一般的です。相続を契機として高齢者が住む家を失ってしまうとしたら、これは大きな問題と言わざるを得ません。従来の法制度では、このような問題を解決することができなかったため、改正を求める声がありました。

改正法では、このような問題点を解決するため、「配偶者居住権」というまったく新しい権利が作られることとなったのです。

配偶者居住権が認められるための条件

被相続人の配偶者に配偶者居住権が認められるためには、まず相続開始時点において、配偶者が被相続人の所有している不動産に居住している必要があります。

配偶者居住権を取得するためには、この条件をクリアしたうえで、さらに次に掲げるどちらかの条件を満たさなければなりません。

なお、相続開始時点において当該不動産が被相続人と配偶者以外の者との共有であった場合には、配偶者居住権は認められません(民法1028条但し書き)。

 ①遺産分割で配偶者居住権を取得した場合

相続人間で行われた遺産分割協議の結果、被相続人の配偶者が配偶者居住権を取得した場合、配偶者は当該不動産に居住する権利を取得することになります(民法102811号)。

 ②配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合

被相続人の遺言によって配偶者居住権が遺贈の目的とされた場合、配偶者はこの居住権を取得することができます(民法102812号)。

なお被相続人には、遺言によって配偶者居住権の存続期間を定めることも認められています。

 ③審判により配偶者居住権が認められた場合

一定の場合には、家庭裁判所の審判によって配偶者居住権が認められることもあります(民法1029条)。

 生涯無料で居住が可能に!

配偶者居住権とは、文字どおり配偶者にしか認められない権利です。相続人間においてなされた遺産分割協議や遺贈などにより、被相続人の配偶者がこの権利を取得した場合、その人は生涯無料で対象不動産に居住する権利が認められます。法律上、配偶者居住権の存続期間は「終身」とされているからです(民法1030条)。

ただし、この居住権の存続期間については、遺産分割協議の内容や遺言などによって変更することも可能とされています。存続期間に関して変更がなされている場合には、その期間の経過をもって配偶者居住権は消滅することになります。

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 配偶者居住権は登記も可能

この配偶者居住権は、登記することも認められています。法務局において対象不動産に関して登記することにより、当事者以外の第三者にもその存在を知らせることができるようになっています(民法1031条)。

 配偶者居住権が必要となる具体例

それではここで、配偶者居住権が必要となる具体例に関してご紹介しましょう。

つぎのような事例を考えてください。

 相続財産:自宅(2000万円)、預金(2000万円)

相続人:配偶者乙、子供A

 上記の事例における法定相続分は、乙・Aともに2分の1です。

このため遺産分割協議の結果によっては、つぎのような不具合が出てくることが考えられます。

 配偶者に不都合が発生する具体例①

当事者の遺産分割協議により、つぎのように相続することとなったとしましょう。

乙:自宅(2000万円)

A:預金(2000万円)

相続財産の総額4000万円のうち、それぞれ2000万円ずつの財産を取得しているのですから、この遺産分割は法定相続分どおりの公平な相続となっています。

この場合、乙さんは居住用不動産を確保できることになり、生涯無料で住み続けることができるようになります。なぜなら、乙さんは居住用不動産の所有権を取得することになるからです。乙さんは、この分割協議によって、「住む場所」は確保できました。しかし、人間が生きていくためにはお金も必要です。

この事例では、乙さんは住むところに困ることはなくなりますが、その後の生活費に不安が残ることになってしまいます。一般的に考えた場合、乙さんはある程度以上の高齢者であることが予想されます。その場合、乙さんは働くことができず、自分の収入がまったくないことも考えられるのです。

もちろん乙さんが生活に困った場合には、一般的には子供であるAさんが援助してくれることが多いでしょう。しかし世の中には、そのような関係にない親子もたくさん存在します。もし子供が援助してくれない場合には、最悪の場合乙さんは生活していけなくなってしまう可能性があるのです。これでは不都合です。

配偶者に不都合が発生する具体例②

それでは今度は、当事者の遺産分割協議により、つぎのように相続することとなったとしましょう。

乙:預金(2000万円)

A:自宅(2000万円)

今回の事例でも、乙・Aは相続財産の総額4000万円を2分の1ずつ相続しているのですから法定相続分どおりのフェアな相続となります。

今回のケースでは、乙さんは2000万円もの預金を相続するため、今後の生活資金に困ることはありません。しかし、その代わりにそれまで居住していた自宅に住み続けるための法律的な権利を失うことになってしまいます。なぜなら不動産に住み続けるためには、法律上その不動産に対する何らかの権利が必要とされるからです。遺産分割においてAさんが自宅不動産の所有権を所得した場合、乙さんは不動産に関する権利を取得できないことになります。いかにそれまで長年住み続けてきた不動産であっても、法律上何らかの権利がない以上、退去しなければならないのです。

この場合も通常であれば、子供であるAさんは乙さんが今後も不動産に住み続けることを了承してくれるでしょう。その場合、乙さんが退去を迫られるなどという問題は発生しません。しかし、親子関係が悪化している家庭などでは、乙さんは居住している不動産から退去させられることになりかねないのです。

このようなケースも不都合です。法律的に、何らかの対策が必要となります。

配偶者居住権を取得した場合

それでは上記の設例において、乙さんに配偶者居住権が認められる場合にはどうなるでしょうか?

当事者の遺産分割協議の結果、具体的な相続財産がつぎのようになったとしましょう。

乙:配偶者居住権(1000万円)、預金(1000万円)

A:自宅所有権(1000万円)、預金(1000万円)

この場合には、配偶者居住権を1000万円の経済的価値があるものと考え、配偶者がこれを取得し、子供であるAさんは自宅の所有権を単独で相続することになります。自宅所有権は配偶者居住権が設定されているため、その分価値が低くなり1000万円の価値と判断することができます。そして預金に関しては2分の1ずつ相続することとし、それぞれが1000万円ずつ取得することとなりました。

この場合、乙さんは自宅不動産に生涯無料で住み続けることが保証され、さらに1000万円の生活資金も確保できることになります。そして将来、乙さんが死亡した場合には配偶者居住権がなくなるため、何の制限もない完全な所有権をAさんは取得することができることになります。

こうすることによって、上記2つの事例のような不都合を解消することができるようになるのです。

配偶者短期居住権の新設

このように配偶者居住権は、被相続人の死亡後において配偶者が住む場所を失ってしまうという事態を避けるために新設されたものです。しかし、この権利は法律上当然に認められる権利ではありません。遺贈や遺産分割協議などによって配偶者がその権利を取得する必要があるのです。

つまり、何らかの事情により配偶者がこの居住権を取得しなかった場合、その配偶者は居住している不動産に住み続ける法律上の権利を失うことになります。この場合、最悪の事態として長年住み続けてきた不動産から、すぐに退去することを求められる可能性があります。しかしそれでは、被相続人の配偶者にとって、あまりに酷というものでしょう。仮に退去しなくてはならないとしても、最低でもつぎの転居先を決めるなど一定程度の期間は必要です。

このような問題を解決するため、今回の法改正ではあらたに「配偶者短期居住権」という権利も新設されることになりました。

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配偶者短期居住権とは

すでにご説明させていただいた「配偶者居住権」は、法律上当然に認められる権利ではありません。繰り返しになりますが、遺産分割協議などによって配偶者が権利を取得する必要があるのです。

これに対して、この「配偶者短期居住権」は一定の条件を満たすことによって、法律上当然に認められる権利となっています。このため相続人間の遺産分割協議の結果がどのような内容のものとなっても、被相続人の配偶者には、その居住不動産に一定期間住む権利が認められることになったのです。

配偶者短期居住権が認められる条件とは

配偶者短期居住権が法律上認められるためには、つぎの条件を満たしている必要があります。

①相続開始時点において、被相続人所有の不動産に住んでいること

配偶者短期居住権が認められるためには、相続開始時点において配偶者が被相続人所有の不動産に住んでいたことが必要となります。

②無償で居住していたこと

配偶者に短期居住権が認められるためには、さらに上記不動産に無償で居住していたという事実が必要です。

上記2つの条件を満たすことで、被相続人の配偶者には対象不動産について一定期間居住する権利が認められることになるのです。

最低でも6か月は居住が可能に!

今回新設された配偶者短期居住権によって、一定の条件を満たした場合には被相続人の配偶者には、相続開始時に居住していた不動産に一定期間住み続ける権利が認められることになりました。

それではこの「一定期間」とは、いったいどれくらいなのでしょうか?

配偶者短期居住権が認められる期間の終期については、具体的にはつぎの2つのうち、どちらか遅い方とされます。

①遺産分割協議が成立した日

遺産分割協議が成立した場合、配偶者短期居住権はその日をもって消滅することになります。

ただし、相続が開始してから6か月経過していない場合には、後述のとおりその6か月が経過するまで居住権は消滅しません。

つまり、相続開始後6か月の経過後に遺産分割協議が成立し、被相続人の配偶者が配偶者居住権を取得しなかった場合、即退去の義務が発生することになります。

②相続開始後6か月間

被相続人の配偶者には、相続開始時点から最低でも6か月間は居住権が認められます。

仮に6か月以内に遺産分割協議が成立した場合であっても、相続開始後6か月間は居住権が保証されるのです。また6か月経過後も、まだ遺産分割協議が成立していない場合には、上記のとおり協議が成立するまで居住する権利が認められることになります。

配偶者短期居住権の活用例

被相続人の配偶者において、近い将来老人ホームや介護施設などに入所することが決まっている場合には、一定の期間だけ居住できる不動産があれば足りることになります。この場合、配偶者にとっては不動産の所有権は不要であり、入所予定である施設に要する費用などのため現金や預貯金を相続するほうが便利であることになります。

このようなケースでは、相続財産中の不動産を被相続人の配偶者は必要としていません。そのため実際の遺産分割に際しては、現在居住している不動産の所有権などは取得せず、現預金などを優先して相続することになるでしょう。

しかし、居住用不動産の所有権や配偶者居住権を取得しないことが確定する以上、法律的にはそこに住み続ける権利を失うことになってしまいます。この場合、遺産分割協議後すぐに居住用不動産から出ていかなければならなくなる恐れもあります。このような問題の解決を図るため、このような事例において「配偶者短期居住権」が法律上認められることになるのです。

この権利をうまく利用することによって、施設への入所までの期間、それまで居住してきた不動産に住み続け、現預金などを優先して相続することが可能となるのです。

配偶者短期居住権をうまく利用した具体例

それではここで、配偶者短期居住権を上手に活用した具体例をご紹介しましょう。

今回も前回と同様、つぎのような事例で考えてみることにします。乙さんには配偶者短期居住権が認められることとしましょう。

相続財産:自宅(2000万円)、預金(2000万円)

相続人:配偶者乙、子供A

法定相続分は、乙・Aともに2分の1です。

今回の事例においては、乙さんは老人ホームへの入所が決まっているため、不動産への長期の居住権が不要です。

このような状況においては、つぎのように遺産分割すると、当事者にとって好都合となることが考えられます。

乙:預金(2000万円)

A:自宅(2000万円)

乙さんには配偶者短期居住権が認められるため、相続開始後6か月間は住む家を失うことはありません。この期間内に老人ホームに入所できるのであれば、乙さんにとっては、配偶者居住権や居住不動産に関する権利などは一切相続する必要はありません。その代わりに、今後の費用の支払いなどのために、預金を優先して相続するほうが都合がいいわけです。

Aさんにとっても、単独で不動産の所有権を取得でき、相続開始後6か月以内に配偶者短期居住権も消滅するのですから好都合です。

このように配偶者短期居住権は上手に利用することによって、相続人それぞれにプラスとなる遺産分割が可能となるのです。

配偶者居住権の施行時期とは

今回ご紹介した「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」は、202041日から施行されることとなっています。

それまでの間、配偶者居住権・配偶者短期居住権は認められませんので注意が必要です。

まとめ

今回は、相続法の改正によりまったく新しく認められることとなった「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」についてご紹介しました。

一定の条件を満たすことによって、被相続人の配偶者には居住不動産に関する生涯無料の居住権が認められることになります。ただし、そのためには、被相続人の配偶者は遺贈を受けるか、遺産分割協議で配偶者居住権を取得する必要があります。

また今回の法改正によって、配偶者居住権を取得できない場合でも法律上最低でも相続開始後6か月間は相続開始時に居住していた不動産に対する居住権が認められることになります(配偶者短期居住権)。

このように被相続人の配偶者は、今回の相続法改正によって従来より厚く保護されることになりました。

このように相続に関する法律の世界は、目まぐるしく変わってきています。

もし相続に関して疑問や不安がおありの場合には、放置しておくことは得策ではありません。ほんの些細なことが相続人間のトラブルに発展してしまう事例は、世間に数えきれないほど存在するのです。

相続に関する疑問・不安がある場合には、お気軽にご相談ください。

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