食べログに起こされた削除に関する3つの裁判を知っていますか?

「食べログに誹謗中傷の口コミが書かれたのに削除請求に応じない!裁判で勝って削除させてやる!」と意気込んでみたものの、
「でもうちみたいな小さな飲食店が、食べログみたいな巨大サイトを運営する会社と裁判で争っても勝てないんだろうな…」と弱気になる方もいることでしょう。

たしかに食べログは、月間約18億3千万ページビューという膨大な数字を叩き出す巨大グルメサイトであり、皆さんご存じの「価格.com」を運営する株式会社カカクコムが運営しています。こんな大企業相手に裁判で挑もうと考えるのは腰が引けることでしょう

しかし実は、食べログの運営方針や対応に不満を抱いた飲食店の方々がカカクコムを相手取って訴訟を起こした事例が既に存在します。先駆者である彼らが残してくれた裁判の行方を知ることで「自分のケースでは削除依頼が通りやすいのか」「訴訟で勝てる見込みはあるのか」という判断がしやすくなることでしょう

なお、裁判ではなくご自身で削除依頼する方法については以下の記事にわかりやすく解説されています。

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1.店の掲載写真が事実と異なるため起こした訴訟

2010年9月に佐賀県の飲食店を経営する32歳の男性(以後、「Aさん」とします)が食べログを運営する株式会社カカクコムを佐賀地裁に提訴した事案です。

2010年3月に店のメニューや外観の写真が食べログに無断で掲載されましたが、その後に店の外装やメニューを変更したにもかかわらず古い画像はそのまま掲載されていました。Aさんは4度に渡り食べログに削除要請をしましたが拒否されたため、店の情報を全て削除するよう訴訟を起こしました(つまりは自店舗のページの削除)

Aさんは「(今現在の)店のホームページと食べログの掲載内容との違いがお客に誤解を与える」と主張しましたが、これに対し食べログは「投稿されたものは最新の情報ではないとサイトに注意書きもしており、投稿された時の情報としては誤りではない」と主張し、全面的に争うものと思われました。

しかし2011年1月に、食べログは店の情報を削除し、Aさんは訴訟を取り下げるという内容で合意に至りました。食べログとAさんとの間で金銭(和解金)の授受はあったとのことですが、その額なども含め詳細な情報は一切公表されておらず、Aさん側も詳細は話せないとしています。

食べログと店のそれぞれの言い分について

食べログが裁判で主張したように、たしかに口コミレビューの上部には以下のような注意書きが記載されています。

食べログの注意書き

この口コミは、〇〇さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。

しかし、ネットをする人の多くはページ内の欲しい情報まで素早くスクロールしクリック(タップ)するわけですから、気付かない、あるいは、気にも留めない読者もいることでしょう。

そうなれば、訴えたAさんの言い分である「お客に誤解を与える」事態も十分起こり得ることです。

例えば「メニュー表の画像を見てリーズナブルだと思って来たら値段が違っていた」という実際に来店した人からのクレームや、「写真に写っている店が見つからなくて帰った」という機会損失のリスクもあるでしょう。

いくら注意書きを設けたところで実際に損害を被るのは店舗側です。無断で店の情報を掲載して利益を生み出している以上は、店の申し出により”古い情報”と判明した時点で削除依頼に応じるべきであったのではないでしょうか。

古い情報は削除に応じてもらえる可能性も

もし和解が行われずに裁判でAさんが勝訴したり和解金額を公表していたとしたら、全国の飲食店が相次いで訴訟を起こしていたかもしれません。

訴訟が連発すればその対応に追われるばかりではなく、世間の食べログに対する、ひいては運営会社であるカカクコムに対する企業イメージが悪化することは避けられません。

実質的に和解の形で終結させたことも、Aさんに支払った金銭の額を秘匿していることも、食べログのビジネスモデルの崩壊を防ぐためと考えられます。

とはいえ、判決による決着ではないものの「過去の古い情報(写真)によって業務に支障をきたす」という理由で訴えられた食べログ側が結果的には削除に応じたという前例はできました

過去に投稿された古い情報と今現在の情報が異なっていることを確認することは食べログ側でも比較的容易に行えます。この訴訟と同様の問題で悩まれている方は、今現在の情報(外観・内観・メニュー表・料理などの画像)を食べログに示すことで削除要請が認められる可能性も十分あると思います。

2.口コミにより来客数が減少した店が削除を求めた訴訟

2013年5月に札幌の飲食店経営会社(以後、「B社」とします)が食べログを運営するカカクコムを相手取り、自店舗のページの削除と220万円の損害賠償を求めて札幌地方裁判所に提訴しました。

B社は自ら食べログの店舗会員登録をしましたが、「美味しくない」「料理が出てくるまで40分くらい待たされた」という旨の口コミとともに「料理の食べかけの写真」も投稿されました。その口コミが投稿された翌日から来客数が減り売り上げが大幅に減少したため、食べログに対し料理の食べかけ写真と40分くらい待たされたという口コミの削除を要請しました。

食べログは写真の削除には応じましたが口コミの削除については「投稿者に対し、当該店舗から指摘を受けたことを説明したうえで口コミの修正を依頼している」と回答し、削除は行いませんでした。

その後B社は食べログに対し、自店舗のページの削除と損害賠償を求める書面を送りましたがそれも応じてもらえなかったため、食べログが掲載を続けることが不正競争防止法違反人格権に由来する名称権等の侵害であるなどと主張して裁判を起こしました。

しかし札幌地裁はB社の請求を棄却しました。B社は高裁に控訴しましたが請求棄却され、さらに最高裁に上告しましたが受理されず2016年6月に2審判決で確定となりました。

請求が棄却された理由は?

まずB社は、自店舗の名称を食べログが掲載することは不正競争防止法2条1項2号の禁止する「著名表示冒用行為」にあたると主張しました。著名表示冒用行為とは、世間に知れ渡っている他人の商品名(店舗名も含む)やその商品名に類似したものをさも自分の商品であるかのように表示する行為です。

例えば、誰かが勝手に「ガスト」という飲食店を営んだり、「サッ(ホ)ロ一番」というラーメンを販売したりすることがこれに該当するでしょう。

しかし、地裁は以下のようにB社の主張を退けました。

  • ①店舗名は札幌市やその周辺地域の雑誌やフリーペーパーなどに数回掲載されたりテレビに紹介されただけであって、全国的に高い名声や信用などを得ているとはいえない、つまりは、そもそも「著名」ではない
  • ②食べログサイトが店舗名を表示しているのはあくまでも食べログユーザーに「このページに書かれている情報や口コミは〇〇店(店舗名)についてのことです」と特定して示すためであって、食べログ(カカクコム)がその店舗を経営しているかのように装う目的で利用しているわけではない

またB社は、「人格権に由来する名称権等の侵害」も主張しましたがこれも退けられています。人(法人も含む)は自分の名前を冒用(本人の許可なく使用すること)されない権利がありますが、これも上記の②と同じ理由で、食べログが店舗営業をしているかのように装うために使用しているわけではないので冒用にあたらないとしました。

さらに地裁は、B社は法人として営業活動をしており個人と同様の自己情報コントロール権は”及ばない”と述べています。

高等裁判所においても原審である地裁判決を支持しつつ、さらに、「一般公衆を相手として経営している以上はお客の評判によって利益を得たり損失を受けたりすることを甘受すべき立場にある」「社会的相当性がある口コミであればそれによって営業損失が出たとしても甘受すべきものだ」と述べ請求を棄却しています。

店舗情報のページ”そのもの”の削除要請は難しい

この裁判では口コミの削除ではなく、「店舗情報の削除」つまりは店の情報が掲載されているページそのものを差止(削除)請求するものでした。

しかし地裁では、削除請求を認めれば表現の自由を侵害し、また、人が得られる情報を恣意的に制限することになるので容認できないと述べています。

たしかに、他人の商品名や店舗名を自己の運営するWEBサイトで用いただけで差止(削除)請求や損害賠償請求をされてしまうのであれば、萎縮効果により表現の自由は害されるでしょう。

また、自分の店を称える有利な情報はそのままにし、不利な情報があれば削除請求するといったことが許されるのであれば、一般消費者は商品や店のサービスについての両面を知ることができず、商品の購入やサービスの申し込みに際しての判断材料が極めて少なくなり不利な立場に置かれてしまいます。

また、高裁では、B社は食べログの店舗会員として自分の店の情報を公開していたのであるから、利益侵害があったとは認められないと述べています。

これは、”B社の自己責任だ”と言っているのではなく、既に何らかの形で世間に店の情報が公開されているのであれば特定のサイト(今回は食べログ)でその情報が掲載されても利益や権利を害することにならないと判断したものと思われます。

B社の店は雑誌やテレビ等のメディアで既に取り上げられており、食べログ掲載をことさら問題視する性質のものではなく裁判所の判断は妥当と思われます。

ただし、今回の裁判はページの削除請求であって口コミの削除請求ではありません。繰り返しとなりますが、札幌高裁は「社会的相当性がある口コミであればそれによって営業損失が出たとしても甘受すべきものだ」と述べており、「一般的に仕方ないと思えるような事情(社会的相当性)が”ない”口コミまで甘受すべき」とは言っていません

ページの削除は難しくとも、悪口や風評被害などの誹謗中傷の口コミ投稿が名誉毀損や業務妨害に該当するのであればそれらの削除請求が認められる余地は十分あります

3.店舗情報の掲載が営業戦略に影響するとして削除を求めた訴訟

大阪市内でバーなどの飲食店を経営する会社(以後、C社とします)が、食べログを運営するカカクコムに対し店舗情報の削除と330万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した事案です。

C社の運営するバーは、繁華街から離れた立地で店に看板等も設置せず客のインターホンにより店員が店のドアを開錠して入店する方式をとっていました。内装も秘密性をイメージしたものとなっており、店内には「当店は会員制のプライベートラウンジですので口コミサイトへの投稿はご遠慮ください」とプレートを貼り、いわゆる「秘密の隠れ家」のコンセプトにした飲み屋です。

しかし客の1人が店の名称や住所、電話番号、交通手段、営業時間、定休日等の基本情報を食べログに登録し、店内や飲食物の写真と口コミを投稿してしまいました。

隠れ家的雰囲気をウリにした営業戦略であったためC社は食べログに対し店舗情報が掲載されたページの削除請求をしました。

しかし食べログ側は、飲食店の感想を書き込むことは表現の自由の範囲内であり、また、このバーのホームページが既に存在しそこに店舗情報が公開されていることを理由として請求に応じませんでした。そのためC社は提訴することとなります。

なお、前提として、当該バーは会員制のプライベートラウンジと謳っていますが実際は顧客名簿もなく会員制ではありませんでした。また、バーの公式サイトもあり、さらにC社やバーの店長がFacebookで店舗情報を発信していました

店舗側の主張と裁判所の判断は?

そこでC社は自己情報コントロール権と営業権または業務遂行権を根拠に削除(差し止め)請求や不法行為による損害賠償請求を行っています。

この点、自己情報コントロール権につき大阪地裁は、「自己情報コントロール権とは、本件では、C社が自店舗の情報を自由に取捨選択し、公開するものとしないものを自分の意思で決定し、食べログその他の者が決定できない権利または利益である」としたうえで、「この権利の内容や適用範囲が明らかでない」と前置きし、「自己情報コントロール権をもって、不法行為や差し止め(削除)を認めることはできない」としました。

また、営業権または業務遂行権については「憲法22条1項で保障される職業選択の自由に内包される」「法人についても認められる」とし、「業務遂行のために自分の情報を公開するかどうかを選択する権利や利益がある」としました。
しかし、バーの店舗情報はC社自身がホームページやブログで公開しており、また、食べログはユーザーの口コミに手を加えることもなく、店の情報についても一般公開されているものを掲載するという方針でC社の削除要請に応じなかっただけであるため違法とまでは言えないとしました。

完全秘匿であったなら違う判決になっていた可能性も

この大阪地裁の裁判では請求が棄却されたためC社はそれを不服として大阪高裁に控訴しましたが、その後カカクコムとの和解が成立しています。

「1」で紹介した佐賀での訴訟の事案と同様に和解内容は公表されておりませんが、食べログサイトでは電話番号が非公開とされ住所の一部も削除されています。

この裁判で注目すべき点は、C社がこのバーのホームページを設け、ブログやソーシャルネットワークでも情報公開をしていたため請求が棄却されたことです。

つまり、「よそで店の情報を一般公開しているのに食べログに載せられたら権利侵害ってそれは違うでしょ」という判断ですね。

ただし逆を言えば、C社が自店舗の情報をネットその他のマスメディアに一切情報を掲載せず完全秘匿で経営していれば削除請求が認められる余地の残された判決といえるでしょう。

この点、裁判所も、「C社の削除請求が認められるためには、食べログが削除請求に応じないことが違法である必要がある」とし、「違法と評価されるかどうかは、被侵害利益の種類と侵害行為の態様との相関関係によって決まるべきものである」としています。

つまり、C社がバーの店舗情報を完全秘匿していたとすれば、食べログがその店の情報をサイトに掲載することで営業権という被侵害利益に対する侵害行為の態様が強まり、相関関係のバランスが壊れて違法であると認められる可能性もあるということです。

「知る人ぞ知る店」「会員制(風)」「紹介客しか入れない」こういったキーワードに弱い客層も一定数います。飲食物や内装・外装の良し悪しもさることながら、一見さんが店に訪れることで「既存客が優越感に浸れる環境」を台無しにされては営業戦略が立ち行かなくなります。今後同様の裁判が起こされた場合に、表現の自由と営業権の保護とのバランスが注目されるところです。

まとめ

札幌の事案では原告(飲食店側)が敗訴しましたが、佐賀と大阪の事案については和解という形とはいえ、食べログがページの削除や一部削除(修正)に応じています。

食べログ側が和解という形をとるのも、「裁判で負けた」という前例を作ることを極力避けたいという意向があるとも考えられます。そのため、ご自身の経営する店舗への権利侵害があると思われる場合には訴訟を視野に入れることも含めていいでしょう。

また、ページそのものの削除ではなく、名誉毀損や業務妨害、プライバシーの侵害等の口コミがある場合にはこれらの裁判とは無関係に削除請求もできますので、ネット誹謗中傷に強い弁護士に気軽に相談してみることをおススメします。

当法律事務所では、ネットでの風評被害の削除や犯人特定を得意とし、また、全国どこからでも親身誠実に相談にのらせていただいておりますのでどうぞお気軽にお電話ください

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