
面会交流調停とは、面会交流を相手方にさせるかどうか、させるとしていかなる条件でさせるのかについて取り決める手続の一つです。
面会交流について夫婦間で話がまとまらない場合、まずはこの手続きを使って、面会交流について取り決める必要があります。
とはいっても、この記事をご覧の多くの方が、調停って何?どんな流れで進んでいくの?という疑問をお持ちではないでしょうか?
そこで、この記事では、
- 面会交流調停の流れ
- 面会交流が制限されるケース
- 相手方が面会交流の条件を守らなかった場合の対処法
などについて弁護士が詳しく解説してまいります。
ぜひ最後までお読みいただき、これから面会交流調停を申し立てる際の参考としていただけると幸いです。
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Contents
面会交流調停とは
まず、「面会交流」とは、子供と離れて暮らすことになった親(非監護権者)が子供と直接会ったり、電話やメール、プレゼントのやり取りなどの直接会わない方法で親子の交流をすることです。
面会交流は、離婚後はもちろん、離婚前であっても夫婦が別居して片方の親が子供と離れて暮らしていれば実施することができます。
そのほか、婚姻はしていないが認知した子がいる場合も面会交流をすることができます。
そして、実施する場合は面会交流の頻度や日時、場所、方法などを具体的に父母が話し合って決める必要があります。
しかし、協議をしても話がまとまらない場合や、子供と一緒に住んでいる方の親が、相手に子供を会わせることを拒否することがあります。
このように、協議が調わない、または協議をすることができない場合に、家庭裁判所に間に入ってもらい面会交流に関する取り決めをする制度のことを、「面会交流調停」といいます。
面会交流調停は、自分と相手が交互に調停室に入り調停委員に話を聞いてもらう方式ですので、元パートナーと顔を合わせたくない人も安心して話し合いを進めることができます。
なお、面会交流調停で話し合いがまとまらず調停不成立となった場合には、自動的に審判に移行し、裁判官が一切の事情を考慮して面会交流の内容が決定されます。
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面会交流調停の申し立てについて
それでは、協議で面会交流に関する話がまとまらず、調停に移行しなければならなくなった場合の申し立ての方法や調停の流れなどについて解説いたします。
申立先の家庭裁判所
相手方(監護権者。実際に子供を養育している親)の住所地を管轄する家庭裁判所が申立先となります。
例えば、東京に住んでいる人が、大阪に住んでいる元配偶者との面会交流調停を希望する場合、原則として大阪の家庭裁判所に調停の申し立てをする必要があります。
ただし、申し立てる側が調停のたびに遠方の家庭裁判所に出向くことは大変ですので、お互いの合意のもと別の家庭裁判所(例えば、東京と大阪の中間地点の裁判所など)に申し立てることもできます。
申立の必要書類
- 面会交流調停の申立書及びその写し(コピー)
- 未成年者の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 収入印紙
- 連絡用の郵便切手
- その他、必要に応じて家庭裁判所から追加で提出を求められるもの
申立の費用
- 収入印紙代:子供1人につき1,200円
- 連絡用の郵便切手代:おおよそ1,000円
連絡用の郵便切手代は裁判所によって異なりますので事前に管轄裁判所に電話して確認しましょう。
申立書の入手方法と書き方
申立書の書式は、「面会交流調停の申立書ダウンロード」をクリックすることで入手できます。
書き方については、「面会交流調停申立書の記入例」を見ながら記載してください。
面会交流調停の流れ
①家庭裁判所に「面会交流調停の申立書」等を提出後、②呼び出し状が送達される
家庭裁判所に「面会交流調停の申立書」等の書類を提出します。
書類提出後、約2週間前後で、申し立てをした家庭裁判所から呼出状が送達されてきます。呼出状は相手方にも送達されてきます。
③家庭裁判所調査官による調査
呼出状には出廷すべき家庭裁判所、日時(第1回調停期日は申し立てから約1か月後)等が記載されていますから、記載されているとおりに出廷しましょう。
どうしても都合がつかない場合は、あらかじめ家庭裁判所へ連絡して調整しましょう。
他方、家庭裁判所は、呼出状の送達後第1回調停期日前、あるいは調停を開いた後必要と認めた場合に、家庭裁判所調査官(以下、調査官といいます)に対して、面会交流を認めることが適当か否か、いかなる条件で面会交流を認めるかなどを判断するための調査(事実の調査)を命じることがあります。
調査官が調査した結果は「調査報告書」という書類にまとめられます。
そして、「調査報告書」は裁判所に提出され、裁判官や調停委員との間で情報が共有されます。
この調査を通じて面会交流を認めることが不適当であることが明らかとなった場合は、家庭裁判所から申し立ての取り下げを勧められることがあります。
仮に、申し立てを取り下げた場合、調停は終了です。
④家庭裁判所へ出廷
呼出状に基づき家庭裁判所へ出廷した場合、申立人と相手方は別々の部屋で待機します。
そして、調停委員(※)から呼び出しを受け、待機室とは別の部屋で面会交流に関する希望などを聴かれます。
また、調停委員は相手方からも同じように話を聴きます。
調停委員からは相手方の希望を伝えられますし、申立人の希望も相手方に伝えられます。
このようにして申立人と相手方は面会交流の条件に関して合意を形成していきます。
※調停委員
面会交流調停の手続きを進めていく上で適任だとして裁判所から選ばれた人。一定程度の社会経験と専門知識を兼ね備えた人が適任だと考えられますから、年齢は原則として40歳以上70歳未満の人で、弁護士、大学教授などの職に就いている方が選ばれることが多いです。
また、調停期日中には、前述した調査官の調査のほかに、調査の一環として、申立人と子との試行的面会交流(面会交流を認めることが適当か否かを判断するための面会交流のテスト)が実施されることもあります。
調査官は調停委員が特に必要と認めたときは調停期日に立ち会い、調査を通じて築いた意見を調停委員に対して述べることができます。
裁判官や調停委員は、調査官の意見を重要視する傾向にあるため、調査官の調査に対する対応の仕方は極めて重要です。
1回の調停期日にかかる時間は2時間程度です。調停期日は月1回、合計で平均的に3回~5回ほど開かれますが、ケースによってはそれ以上開かれる場合もあります。
⑤調停成立 or ⑥調停不成立
調査官の調査や調停期日で当事者から聴いた話などから、面会交流を制限すべき理由が認められない場合には面会交流を認める方向で調停が進められます。
そして、申立人、相手方双方が互いに条件につき譲歩しあいながら合意に達した場合には、調停委員会で「調停成立」が宣言され、調停が成立したことが確認されます。
そして、宣言から数日後、合意内容が「調停調書」という書類に記載された時点で正式に「調停成立」となります。
他方で、面会交流の条件につき合意に達しない場合、あるいは相手方が調停期日に出廷せず話し合いができない場合は「調停不成立」となります。
調停不成立となった場合、手続きは自動的に「審判」へと移行します。
審判の特徴は、調停と異なり、当事者間の話し合いではなく、あくまで当事者の主張をベースとして裁判所が面会交流の条件について決めるという点です。
面会交流を制限されるケース
面会交流は親の権利ではありますが、無制約に認められるというわけではありません。権利といえども一定の制約にかかります。
また、面会交流は子の利益のためにもあるのです。
したがって、親の権利として保護すべきではない場合のほか、面会交流を認めることが子の利益のためにならないと認められるケースでは、面会交流自体を制限されることがあります。
具体的には以下のケースです。
⑴ 同居時、子に対して虐待を加えていた
過去に、子に対して暴力を振るう、暴言を吐く、わいせつな行為をする、ネグレクト(放置)、無視するなどの虐待を加えていたなどの経歴を有する場合です。
なお、配偶者に対するDVの経歴があるからといって直ちに面会交流が制限されるわけではありませんが、DVが子に悪影響を与えており、子が面会交流を拒否する場合は制限されることとなるでしょう。
⑵ 精神的に不安定、子に悪影響・害悪を与えるおそれがある
申立人がアルコール、薬物、病による影響で精神的に不安定な場合、子に危害を加える、犯罪に巻き込むおそれがある場合などです。
⑶ 調停中、不誠実な態度をとる
相手方に「毎日会いたい」など無理な条件を突きつける、決められた調停期日に理由もなく出廷しない、調査官の調査に非協力的、感情的になって裁判官や調停委員に食ってかかる態度をとるなどです。
⑷ 子が面会を拒否している
子が本当に面会交流を拒否しているかどうかは調査官の調査によって慎重に見極められています。
もっとも、子が11歳を超えてくると子の意思が尊重されはじめ、子が高校生以上となると、ほとんどの場合、子の意思しだいで面会交流を実施するかどうかが決まります。
相手方が面会交流の条件を守らなかった場合の対処法
調停が成立しても相手方が調停で合意した条件を守ってくれない、面会交流をさせてくれない、という事態へと発展することも考えられます。
そうした場合の取るべき対処法を以下でご紹介します。
⑴ 家庭裁判所に履行勧告してもらう
履行勧告とは、家庭裁判所から相手方に対して「調停で取り決めた条件を守ってください、面会交流させてください。」と文書で通知することです。
家庭裁判所に履行勧告してもらうには、家庭裁判所に対して申出を行う必要があります。
履行勧告の申出に必要な書類 |
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履行勧告の申し出は費用もかかりませんし、相手方には「従わなければ何かされるのではないか」と思わせ、面会交流を実現できるというメリットがあります。
他方で、履行勧告には強制力がありません。
つまり、履行勧告はあくまで相手方の「協力(任意)」によって得面会交流を実現させるもので、強制的に実現させるものではありません。
⑵ 家庭裁判所に間接強制命令を出してもらう
家庭裁判所に履行勧告してもらっても面会交流を実現できない場合は、家庭裁判所に間接強制命令を出してもらいます。
間接強制命令とは、相手方に対して「一定期間の間に面会交流をさせない場合は、申立人に対して〇円を払え。」という金銭の支払いを命じる命令です。
面会交流を拒否する相手方に金銭の支払いという心理的プレッシャーを与えて、結果として、面会交流を強制的に実現させようというのが間接強制命令の趣旨です。
家庭裁判所に間接強制命令を出してもらうには、家庭裁判所に対して間接強制の申し立てを行う必要があります。
間接強制の申し立てに必要なもの |
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もっとも、家庭裁判所から相手方に間接強制命令が出されたからといって、相手方がそれに従って金銭を支払ってくれる保障はありません。
仮に、相手方が金銭を支払わない場合は、間接強制とは別に相手方の財産(給与債権など)を差し押さえる強制執行の手続きを取る必要があります。
(関連記事:面会交流の間接強制とは?認められるケース、認められないケースを紹介)
⑶ 慰謝料請求する
面会交流を拒否され続けることにより精神的苦痛を被った場合は、この苦痛の程度を金銭に評価しなおした慰謝料を相手方に請求することも検討しましょう。
裁判外での請求は、書面(内容証明)で行うのが一般的です。また、相手方の態度しだいでは直ちに訴訟提起する(裁判上の請求をする)ことも可能です。
ただし、請求が認められるには、一度や二度の拒否では足りず、一定期間拒否し続けられた、という事実が必要です。
また、慰謝料請求することにより、逆に態度を硬化させてしまう可能性もありますので、請求するかどうかは慎重に検討する必要があるでしょう。
(関連記事:面会交流を拒否されたら慰謝料請求できる?条件、相場、裁判例など)
まとめ
面会交流調停は、家庭裁判所に対して申し立てを行うことから始まります。
しかし、申し立てをしたとしても、調査官、調停委員、裁判官に与える印象が悪い場合には、申し立ての取下げを勧められる、面会交流自体を制限される場合があります。
申し立てをしたからといって、必ず面会交流が認められるわけではありませんので注意が必要です。
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