
離婚する場合、養育費の額をどうするかが問題となることがあります。子供を引き取る側からすれば、毎月もらえることになる養育費は、子供を育てるための重要な収入源です。離婚に際して養育費を定める場合、いったいどれくらいにするのが適当なのか疑問に思われることも多いでしょう。そのような場合には、養育費の相場が参考になります。しかし、この相場もそれぞれの家庭の状況などによって、いろいろ違ってくるのです。
それでは、ご自分の生活状況における養育費の具体的な相場とは、いくらくらいなのでしょうか?
今回は、養育費の相場についてご紹介したいと思います。
こちらをお読み頂ければ、ご自分の家庭の状況における養育費の相場がお分かりいただけるようになりますよ。
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養育費とは?
民法730条では、「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない」と規定しています。この条文によって、法律上一定の親族間には、お互いの扶養義務が定められているのです。親子は、もっとも血縁の濃い「直系血族」ですから、親には子供を養育する義務があるのです。養育費とは、扶養義務の一種であるといえます。
このため、離婚に際して子供を引き取らなかった側の当事者は、子供を引き取った相手方に対して、子供を育て成長させるために必要な養育費を支払う義務があるのです。
養育費の内訳
法律上、支払われるべき養育費の額について明確な基準はありません。しかし、まったく基準がないわけではなく、ある程度の目標とすべき基準は存在しています。
その基準とは、離婚後においても子供の生活レベルが、養育費を支払う側の生活レベルと同等になるような金銭が支払われるべきというものです。
そして、この養育費にはつぎのような費用が含まれることになります。
①日常生活にかかる費用
養育費には、子供が日常生活を送るうえでかかる費用が含まれます。
これには、住居費・食費・被服費などが含まれます。
②医療費
養育費は、基本的に子供が成人し独立できるようになるまで支払う必要があります。子供が成人するまでに要する医療費は、当然養育費に含まれます。
③教育費
子供が成人し、立派な社会人となるためには教育は欠かせません。このため、養育費の中には子供の教育に要する費用が含まれます。近年の学歴化社会の影響で、子供の成人後も大学の卒業まで養育費の支払いが必要となる事例も多くなっています。
④その他必要費
上記に含まれない費用でも、子供が成人し独立して生活できるようになるまでに要する費用に関しては、それも養育費の中に含まれることがあります。
養育費はまずは協議で決められるもの
まずは、基本的な事柄から確認しておきましょう。養育費とは、離婚する際に子供を引き取らなかった側から引き取る側に対して支払う金銭のことを言います。この支払いは法律上の義務であり、支払いがなされなかった場合には裁判などを経ることによって相手方に対して強制執行することも可能です。
ただし、養育費の具体的金額について法律は何も定めていません。このため、養育費の額に関しては、まず第一に当事者の合意が優先されることになります。
適切な額の設定が重要
当事者間で養育費を決める場合、もっとも大切なことは毎月の額を適切に定めることです。適切な金額は、当事者の経済的な事情や子供の数などによって、ケースバイケースで異なってきます。つまり、養育費として適切な額を求めるためには、当事者の事情を総合的に判断する必要があります。この適切な額がいわゆる「相場」というものであり、「養育費算定表」(後述)をもちいることによって、その相場を知ることができるのです。
この相場からかけ離れた金額を設定すると、将来的にトラブルが発生する可能性が高くなります。養育費の額が少なすぎた場合には、もらう側の生活が苦しくなるかもしれません。また逆に多すぎた場合には、支払う側の経済的負担が重くなり、養育費の不払いにつながる危険性があります。
このように将来トラブルが発生する可能性を少しでも抑えるためには、養育費の額を適切に定める必要があるのです。
協議で決着がつかないときは「調停」で
当事者の協議で養育費が決まらない場合、家庭裁判所で話し合いを行うことになります。家庭裁判所では、まず最初に当事者間の話し合いである調停が行われます。この場合、家庭裁判所では調停委員などが当事者の意見調整などを行い、なるべく話し合いが成立するよう手続きを進めることになります。
調停でも話し合いが成立しない場合には「審判」となる
このように家庭裁判所で当事者の話し合いの仲介をし、当事者間の合意を促しても結局話し合いがまとまらない場合もあります。この場合、「調停不成立」となります。調停とは当事者間の話し合いが成立するよう家庭裁判所が仲介するという手続きであり、当事者には必ず話し合いを成立させなければならないという法律的な義務がないからです。
しかし調停でも話し合いが成立しない場合、最終的に養育費は審判によって決定されることになります。家庭裁判所では養育費に関する調停が不成立となった場合、自動的に審判に移行することになります。そして、裁判所では当事者の一切の事情を総合的に考慮し、もっとも適切と思われる金額を養育費として決定するのです。
家庭裁判所では「養育費算定表」を利用している
養育費に関する調停が成立しなかった場合、家庭裁判所は審判により当事者にとって適切と思われる養育費の額を定めます。
この際に、重要な判断材料とされているのが「養育費算定表」です。家庭裁判所では養育費算定の基準として、養育費算定表を利用することが多いのです。
「養育費算定表」とは?
このように家庭裁判所において養育費の算定が行われる場合、重要な指標とされるのが「養育費算定表」です。これは当事者の年収や子供の数などをベースとして、適切な養育費の額の相場を算出できるように作られたものです。
養育費を協議で定める場合にも活用可能
以上のように、養育費算定表は主に家庭裁判所で養育費を定める場合に活用されているものです。しかしこの算定表は、養育費を当事者の協議で定める場合にも利用可能です。
養育費算定表を利用すれば、当事者の実情に見合った養育費の相場を簡単に知ることができます。当事者で養育費を定める場合には、この相場をベースとして当事者で協議を行うと将来のトラブルを防ぐことができるかもしれません。
「養育費算定表」は絶対ではない!
家庭裁判所における調停などでは、養育費を定める場合の相場として、養育費算定が活用されています。
しかし、だからといって算定表の相場が絶対ということではありません。協議で養育費を決める場合には一応の目安にはなりますが、実際の金額に関しては当事者の事情などに基づき自由に定めることができます。
ただし、この算定表に基づき養育費を決めた場合、のちのち養育費の額についてトラブルが起こる可能性は低くなると思われます。
養育費算定の基準
養育費算定表では養育費の相場を、つぎの各要素によって決定しています。
①支払う側の年収
世間的に見た場合、養育費を支払うのは元夫であることが多いと思われます。この場合、離婚後元夫は元妻に対し、その年収などに応じて養育費を支払う義務が発生します。
養育費算定表では、サラリーマンの場合と自営業の場合に分け、それぞれの年収に応じて養育費の相場を定めています。
支払う側の年収が多ければ、それに応じて養育費の相場も高くなります。
②受け取る側の年収
離婚に際して元妻が子供を引き取る場合、元夫から養育費をもらうことができます。
養育費の具体的な相場に関しては、上記のように元夫の年収だけでなく、元妻の年収も判断材料とされます。
また、支払う側の年収の場合と同様、養育費を受け取る側の年収に関してもサラリーマンの場合と自営業の2パターンに分けられています。
養育費を受け取る側の年収が多いほど、もらえる養育費の相場は低くなります。
③子供の数
養育費の算定では、子供の数は重要な判断材料となります。子供の数が多ければ、当然ですが養育費の額も増額されることになります。
④子供の年齢
養育費の算定をする場合、子供の年齢も重要な要素となります。
算定表では、子供の年齢を「14歳以下」の場合と「15歳以上」の2つに分類し、それぞれ養育費の相場を定めています。子供の年齢が15歳以上である場合には、高校や大学など進学費用などがかかることを考慮し、14歳以下の場合の養育費よりも高めの相場設定となっています。
養育費の具体的な相場とは?
それではここで養育費算定表に基づき、各家庭の事情によってどれくらいの金額が養育費の相場になるのか、具体的にご覧いただくことにしましょう。
一般的なパターンである、夫がサラリーマン。そして、妻が専業主婦の場合と、パートで100万円の収入がある場合の各事例で養育費の相場を見てみましょう。
子供は1人の場合と2人の場合の2パターンを想定し、離婚に際して妻が子供を引き取り、夫が養育費を支払うパターンとします。
そして、夫の年収が「200万円」「300万円」「400万円」「600万円」「800万円」「1000万円」「1500万円」の各パターンで、養育費の相場がどれくらいなのかご紹介します。
年収200万円のサラリーマンの場合
元夫の年収が200万円の場合、算定表によると毎月の養育費はつぎのようなものが相場となります。
元夫の年収200万円の場合の毎月の養育費相場 | |||
---|---|---|---|
妻が専業主婦 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 2万円~4万円 |
15歳以上の場合 | 2万円~4万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 2万円~4万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 2万円~4万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 4万円~6万円 | ||
妻の年収が100万円 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 1万円~2万円 |
15歳以上の場合 | 1万円~2万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 2万円~4万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 2万円~4万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 2万円~4万円 |
このように、もらう側にもある程度の年収がある場合には、養育費の額は減少することになります。
年収300万円のサラリーマンの場合
元夫の年収が300万円だった場合、養育費の相場はつぎのようなものとなります。
元夫の年収300万円の場合の毎月の養育費相場 | |||
---|---|---|---|
妻が専業主婦 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 2万円~4万円 |
15歳以上の場合 | 4万円~6万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 4万円~6万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 4万円~6万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 6万円~8万円 | ||
妻の年収が100万円 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 2万円~4万円 |
15歳以上の場合 | 2万円~4万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 2万円~4万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 4万円~6万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 4万円~6万円 |
年収400万円のサラリーマンの場合
元夫の年収が400万円の場合、毎月の養育費の相場はつぎのようなものとなります。
元夫の年収400万円の場合の毎月の養育費相場 | |||
---|---|---|---|
妻が専業主婦 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 2万円~4万円 |
15歳以上の場合 | 6万円~8万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 6万円~8万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 6万円~8万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 8万円~10万円 | ||
妻の年収が100万円 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 2万円~4万円 |
15歳以上の場合 | 4万円~6万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 4万円~6万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 4万円~6万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 6万円~8万円 |
年収600万円のサラリーマンの場合
元夫の年収が600万円の場合、養育費の相場はつぎのようになります。
元夫の年収600万円の場合の毎月の養育費相場 | |||
---|---|---|---|
妻が専業主婦 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 6万円~8万円 |
15歳以上の場合 | 8万円~10万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 8万円~10万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 10万円~11万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 11万円~14万円 | ||
妻の年収が100万円 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 4万円~6万円 |
15歳以上の場合 | 6万円~8万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 8万円~10万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 8万円~10万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 10万円~11万円 |
年収800万円のサラリーマンの場合
元夫の年収が800万円の場合、算定表によると毎月の養育費はつぎのようなものが相場となります。
元夫の年収800万円の場合の毎月の養育費相場 | |||
---|---|---|---|
妻が専業主婦 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 8万円~10万円 |
15歳以上の場合 | 10万円~11万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 11万円~14万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 14万円~16万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 14万円~16万円 | ||
妻の年収が100万円 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 6万円~8万円 |
15歳以上の場合 | 8万円~10万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 10万円~11万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 11万円~14万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 11万円~14万円 |
年収1000万円のサラリーマンの場合
元夫の年収が1000万円の場合、養育費算定表によると毎月の養育費の相場は、つぎのようになります。
元夫の年収1000万円の場合の毎月の養育費相場 | |||
---|---|---|---|
妻が専業主婦 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 10万円~11万円 |
15歳以上の場合 | 11万円~14万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 14万円~16万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 16万円~17万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 17万円~20万円 | ||
妻の年収が100万円 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 8万円~10万円 |
15歳以上の場合 | 11万円~14万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 11万円~14万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 14万円~16万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 16万円~17万円 |
年収1500万円のサラリーマンの場合
元夫の年収が1500万円の場合、養育費算定表によると毎月の養育費の相場はつぎのようになります。
元夫の年収1500万円の場合の毎月の養育費相場 | |||
---|---|---|---|
妻が専業主婦 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 14万円~16万円 |
15歳以上の場合 | 17万円~20万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 22万円~24万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 24万円~26万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 26万円~28万円 | ||
妻の年収が100万円 | 子供が1人の場合 | 14歳以下の場合 | 11万円~14万円 |
15歳以上の場合 | 17万円~20万円 | ||
子供が2人の場合 | 2人とも14歳以下の場合 | 20万円~22万円 | |
1人が14歳以下で、1人が15歳以上の場合 | 22万円~24万円 | ||
2人とも15歳以上の場合 | 24万円~26万円 |
養育費は当事者の事情によって大きく異なる!
ご覧いただいたように、養育費の相場はケースバイケースで大きく異なることになります。
たとえば夫婦間の子供の数が1人であった場合を例として見てみると、養育費を支払う側ともらう側の年収によっては養育費の相場は上記事例で見た場合「1~2万円」から「17~20万円」と、かなりの違いがあるのです。
このように養育費の相場とは、当事者の事情により相当な違いが出てくるものなのです。
養育費支払いの現状
子供を引き取って育てている以上、日常の生活費はもちろんのこと、教育費などいろいろお金がかかるものです。当初の約束どおり養育費が支払われたとしても、生活が手一杯という母子家庭も多いのではないでしょうか。このような場合に、養育費の支払いが滞ってしまったら大変です。最悪の場合、生活が破綻する恐れまで出てきてしまうからです。
しかし統計を見る以上、大半の場合において、養育費は約束どおりには支払われていないのです。
引用:「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」(厚生労働省サイト)
半数以上は養育費の取り決めすらしていない
上記、厚労省の調査結果によると、離婚に際して養育費の取り決めをしているケースは42.9%となっています。つまり、半数以上のケースでは養育費の取り決めすらせずに離婚がなされていることになります。
養育費をもらう必要がないのであれば話は別ですが、もしもらわなければ生活が苦しいなどという場合には、これでは心配です。養育費の取り決めすらせずに離婚した場合、離婚後に養育費をもらえる可能性は相当低下すると考えるべきです。
離婚に際してはできるだけ、養育費の支払いについて取り決めしておくことが望ましいといえます。
取り決めしていても口約束では不十分
養育費の支払いに関して取り決めしている事例においても4分の1強のケースにおいては、取り決め内容に関して文書を作っていません。つまり、単なる「口約束」にとどまっているのです。
口約束だけでは、いざ養育費の支払いが滞った場合に、法律的に支払いを求めることが難しくなってしまいます。養育費の支払いに関する取り決めが口約束だけの場合、結局は「言った」「言わない」の水掛け論になり、最終的には「なし崩し的」に養育費を支払ってもらえなくなる事例も多数あるのです。
養育費の取り決めをした場合には文書作成を!
そのような事態を避けるためには、約束内容を文書という形で残すことが大切です。養育費の支払い額、支払い期間など必要事項を文書に明記しておくことで、のちのトラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。
まったくもらえていないケースが半数以上!
今回の調査によって、離婚後1度も養育費をもらったことのない母子家庭が、たくさん存在することも分かっています。上記統計によると、その割合は53.4%。なんと半数以上のケースで養育費がいっさい支払われていないのです。
養育費の支払い率は年々下がる!
養育費の支払い状況に関しては、離婚後数年の間は毎月きちんと支払われていた養育費も、年月が経つうちに徐々に支払い率が下がってくるのが一般的です。
平成28年の調査結果によると、約38%の事例において、養育費の支払いが途中でストップしてしまっています。
養育費という母子家庭にとって大切な収入源を確保するためには、不払いなどのトラブルが発生する前に何らかの対策をとっておくことが大切です(後述)。
離婚後ずっともらい続けている家庭は約26%!
上記のように、養育費の支払い率は年々下がっていくのが世間の実情です。離婚後、現在においても継続して養育費をもらえている割合は、わずか26.1%。つまり、4分の1程度の家庭しか継続して養育費をもらえていないのです。
母子家庭の平均預貯金額は50万円以下!
上記統計によると、母子家庭における平均預貯金額は50万円以下ということが分かっています。つまり一般的に見た場合、母子家庭の家計は決して楽ではないということになります。
このような状況であるにもかかわらず、毎月の養育費の支払いが滞ることになったら、すぐにも日常生活に支障が出かねません。
日常生活の不安を取り除くためにも、離婚に際してはつぎのような対策を講じておくことが重要です。
のちのトラブルを避けるために必要な対策とは?
以上のように、離婚後子供が成人するまでの間、ずっと養育費をもらい続けることは容易なことではありません。しかし、養育費をもらえなければ子供を満足に育てることができず、生活が破綻してしまう家庭も多いことでしょう。
そのような事態を避けるためには、養育費の支払いをなるべく確実にしておくことが大切です。
公正証書を作っておくのがベスト!
すでにご紹介したように、世の中の大半の事例で養育費は満足に支払われていません。そのため、少しでも養育費の支払い率を高めるためには、離婚に際して充分な用意をしておくことが肝要です。
そのためには、養育費に関する取り決めを公正証書という書面で残しておくことがお勧めです。公正証書とは、公証役場という公的な場所で、公証人という公務員によって作成される厳格な書類です。離婚に際して決められた各種重要事項を公正証書という書面に残しておくことで、メリットを受けることができるのです。
公正証書を作るメリット
養育費の取り決めに関して公正証書を作成する場合、つぎのようなメリットを受けることができます。
①裁判で有力な証拠となる
公正証書は公証人という特別な公務員が、一定の厳格な手続きを踏んで作成する書類です。
このため書類に明示されている養育費に関する当事者の合意内容に関して、後から異議がでる可能性が低くなります。
そのため、養育費の支払いついて将来何らかのトラブルが発生した場合でも、裁判の場において公正証書が自分に有利な材料となるのです。
②書面紛失の対策になる
養育費の取り決めを公正証書によってした場合、作成された書面は公証役場に保管されることになります。当事者に交付されるものだけでなく、同一内容のものが公証役場という公的な機関において保管されるのです。
このため、当事者が万一公正証書を紛失するなどした場合でも、養育費に関する合意内容が不明確になってしまうなどといったトラブルを防ぐことができます。
③不払いの場合に即強制執行可能
統計的に見た場合、養育費の支払い率は離婚後時間が経過するとともに徐々に低下していきます。つまり、現在支払いがなされていたとしても、将来的には不払いとなる可能性が高いのです。
しかし養育費の支払いを公正証書で作っておいた場合には、将来養育費が不払いとなったとしても安心です。なぜなら不払いとなった際には、公正証書によってすぐに相手方の財産を差し押さえることが可能とされているからです。
参考:「養育費の取り決めは公正証書が安心!費用や手続きの流れとは?」
養育費の増額が検討されている!
日本弁護士連合会(日弁連)では、現在家庭裁判所で採用されている養育費算定表による養育費の額が少なすぎると主張しています。この点を是正するため、日弁連は独自に新しく養育費算定表を作成し、ネット上でも公開しています。
養育費の額が最大約2倍に!
日弁連が提唱している新算定表によって養育費を計算した場合、現在家庭裁判所などで利用されている現行算定表より1.5倍から2倍程度に養育費が増額されることになります。
この点に関しては、弁護士の中にも養育費の額が高くなりすぎるなどの意見も散見されており、統一的な見解となってはいないようです。
養育費を増額したい場合に利用可能
上記のように、日弁連が提唱している新算定表は、現時点においては養育費を算定するための主流としての基準となっているわけではありません。
しかし、離婚に際して養育費の増額を求めたい場合には、家庭裁判所で採用されている算定表ではなく、日弁連の算定表をベースとして協議するのも有効な手段かもしれません。
参考:「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」(日弁連サイト)
まとめ
今回は、各家庭の状況における養育費の具体的相場についてご紹介しました。
離婚する場合、実際に養育費を決めるときには、みなさんもかなり悩むことが多いでしょう。少なすぎては離婚後生活に困る可能性がありますし、多すぎては相手方が支払い困難になりやすく、最終的に養育費の不払いにつながる危険性が増すことになります。
そのような危険を避けるためには、一般的な相場とされる金額をベースに当事者で協議する必要があります。
養育費の実際の金額は、支払う側ともらう側の経済的状況などによって変動することになりますが、一般的な相場からあまりかけ離れた額にならないようにすることが大切です。そうすることによって、両当事者にとっての不満を少しでも抑えることができるでしょう。
もし、養育費の取り決めに関して困りごとがある場合には、弁護士など法律の専門家に相談することをお勧めします。
誰でも気軽に弁護士に相談できます |
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